Gift

003. 天界

２

（ど、どういうこと？
ここはどこなの？）



「なんだと、てめぇ！
やるってぇのか！」

酔客のひとりが声を荒らげた。



「てめぇ、死にたいのか！」

相手の男が、酒瓶を壁に叩きつけた。
男は割れた瓶を持って、相手を威嚇する。
シュミットは、荒くれ者達のそんな様子を震えながら見ていた。



「ぶっ殺してやる！」

男達は、獣のような声をあげ、割れた瓶を片方の男が振りかざした。
もう片方の男はその攻撃をなんとか除けるが、やがて二人は取っ組み合ったまま、床に倒れ込んだ。



「うっ！」

下になった男の口から、大量の血が吐き出された。
シュミットはその光景に思わず目を背ける。



『こ、これはどうなってやがるんだ！？』

男は死んだらしく、男の魂がシュミットの近くに浮かんでいた。



『あ、あなたは亡くなったのです。』

『な、なんだって！俺が死んだだと！』

シュミットは無言で、下を指さした。



『な、なんだって、俺があんなところに！』

『あなたは、瓶で刺されて、今、亡くなったようです。』

『馬鹿はことを言うな！
俺はまだ死ねねぇ！
まだ死ぬような年じゃねぇ！』

『もうどうにもなりません。
言いたいことがあったら、天界でお話になって下さい。』

『天界だと？俺はそんなとこ、行かねぇぞ！』

『文句があるなら天界でお話下さい。
とにかく私は、あなたをお連れするように言われてますので…』



シュミットは、元が生真面目な性格だったので、リストを見ながら言われた通りにその魂を天界へ案内した。
来る日も来る日も、シュミットは、魂を天界に運び続けた。