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020. 冥王
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*
「そなたが、三日前にここに来たロインクレーのリチャード・J・スミス、27歳。
間違いないな?」
「ええ…間違いありませんが、それがなにか…」
冥王の前に立っているのは、実直そうな目をした青年だった。
体格が良くないわけではないが、どこか華奢な印象のする男だった。
「この度は、大変すまないことをした。」
「すまない?……なにがです?」
「残念だが、それを話すわけにはいかんのだ。
だが、出来る限りの罪滅ぼしはさせてもらうつもりだ。」
「罪滅ぼし…ですか?」
リチャードは、まるでわけがわからないといった風に小首を傾げる。
「とにかく、後は私にまかせてくれ。」
そう言いながら差し出された冥王の片手に、リチャードの手が触れた瞬間、リチャードは透き通る拳大の玉に変わった。
(おぉ…これは…
とても清らかで美しい魂をしておる…
このような良き魂を持った青年になんともすまないことをしてしまったものだ。)
冥王は、しばしその玉を眺めていたが、やがてそれを大切そうに懐にしまうと、冥界の役場を後にした。
*
「ようし、これで大丈夫だ。」
泉の水で丹念にリチャードの魂の玉を洗った冥王は、その玉を傍らにいた死神に手渡した。
「わかっているだろうな。
今度失敗したら、もうおまえはクビだ!
それだけではない。
永久に冥界から追放するからな!」
「わ、わかってますよ!
今度は絶対にしくじりませんって!
でも、俺は、魂を引き渡す時にちゃんと確認済みのサインをもらってるんですよ。
つまり…」
「そのことなら、おまえに言われなくともわかっておる!
だからこそ、もう一度チャンスを与えたのだ。
もちろん、あいつは降格処分された。
もうじき、おまえの手下として配置されるのではないか。」
その言葉を聞いて、死神は驚くと同時にどこか満足気な微笑を浮かべる。
「あの方が死神の手下にですか…
そりゃあ、お気の毒に…」
言葉とは裏腹に死神の顔はやけに綻んでいた。
「では、行ってまいります!」
死神は、冥王に跪いて頭を下げると、その場から空気のようにかき消えた。
「そなたが、三日前にここに来たロインクレーのリチャード・J・スミス、27歳。
間違いないな?」
「ええ…間違いありませんが、それがなにか…」
冥王の前に立っているのは、実直そうな目をした青年だった。
体格が良くないわけではないが、どこか華奢な印象のする男だった。
「この度は、大変すまないことをした。」
「すまない?……なにがです?」
「残念だが、それを話すわけにはいかんのだ。
だが、出来る限りの罪滅ぼしはさせてもらうつもりだ。」
「罪滅ぼし…ですか?」
リチャードは、まるでわけがわからないといった風に小首を傾げる。
「とにかく、後は私にまかせてくれ。」
そう言いながら差し出された冥王の片手に、リチャードの手が触れた瞬間、リチャードは透き通る拳大の玉に変わった。
(おぉ…これは…
とても清らかで美しい魂をしておる…
このような良き魂を持った青年になんともすまないことをしてしまったものだ。)
冥王は、しばしその玉を眺めていたが、やがてそれを大切そうに懐にしまうと、冥界の役場を後にした。
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「ようし、これで大丈夫だ。」
泉の水で丹念にリチャードの魂の玉を洗った冥王は、その玉を傍らにいた死神に手渡した。
「わかっているだろうな。
今度失敗したら、もうおまえはクビだ!
それだけではない。
永久に冥界から追放するからな!」
「わ、わかってますよ!
今度は絶対にしくじりませんって!
でも、俺は、魂を引き渡す時にちゃんと確認済みのサインをもらってるんですよ。
つまり…」
「そのことなら、おまえに言われなくともわかっておる!
だからこそ、もう一度チャンスを与えたのだ。
もちろん、あいつは降格処分された。
もうじき、おまえの手下として配置されるのではないか。」
その言葉を聞いて、死神は驚くと同時にどこか満足気な微笑を浮かべる。
「あの方が死神の手下にですか…
そりゃあ、お気の毒に…」
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「では、行ってまいります!」
死神は、冥王に跪いて頭を下げると、その場から空気のようにかき消えた。
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