Gift

029. 外つ国の遺産（とつくにのいさん）

７

「それで、あの町からここへはいつでも来られるんですか？」

 「いや、そうじゃない。
あの町の者は、一度だけ、過去へ戻ることが許されるんだ。
それで、僕達は今日ここに来た。」

 「どうして今日なんですか？」

チャックの問いに、老人たちは顔を見合わせて微笑んだ。



 「それは言えない。
だが、すぐにわかるだろう…
あ…そろそろ、月の祭りが始まるんじゃないか？」

 「た、大変だ！
 行こう、ルーシア！」

 「え…？え、ええ……」

 駆けだしたふたりの後ろ姿に、老人たちはまた穏やかな笑みを浮かべた。



 ＊



 「今日は、皆に重大な報せがある。」

 月の祭りが終わると、族長が大きな声を発した。



 「族長…なんですか？
 何か問題でもあったのですか？」

 最前列に座っていた男性が、声を上げた。



 「チャック…ここへ…」

 「え？」

 指名を受け、チャックは戸惑いながら、前に進み出た。



 「皆の者…この度、ここにいるチャック・リードをサマラの民として迎えることにした。」

 「えっ！？」

 「チャックはここに住み、サマラの慣習に従い、この三年というもの、非常に真面目に暮らした。
サマラの民となる資格はあると思うが、どうだ？」

 族長の問いかけに、皆が温かな声援を返した。
 族長は、満足げに頷く。



 「チャック…異論はないな？」

 「は、はいっ！もちろんです！」

 族長は、チャックの頭に草で編んだ冠をかぶせた。



 「今日からそなたはサマラの民だ！」

 族長が声高らかに叫び、その声にサマラ族の皆がさらに大きな声をあげた。



 「チャック！良かった！」

ルーシアがチャックに抱き着き、涙を流す。
チャックは、ルーシアに向かい、何度も頷いた。



 「族長、皆さん、本当にどうもありがとうございます！
これからもどうぞよろしくお願いします！」

うっすらと目に涙を浮かべるチャックの晴れ姿を、木陰から見ているふたりがいたことに、気付く者は誰もいなかった。