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033. 獣人
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(ほれ見ろ!
こんな男前が、わしの一言でこの通りじゃ!)
グレースは込み上げてくる嬉しさをこらえるのに必死だった。
根が真面目なグレースは、若い頃はひたすらに魔法の勉強に打ち込んだ。
グレースは元々さほど強い魔力を持ちあわせてはいなかった。
幼い頃から優秀な姉達と比べられては、いやな想いをし続けて育ってきた。
グレースが大人になるにつれ、そのコンプレックスも同時に大きく膨らみ続け、なんとかして姉達をしのぐ尊敬される魔法使いになりたいと強く想うようになり、寝る暇も惜しんで勉強した。
その努力の甲斐あって、グレースは薬の調合については一目置かれる存在になったが、魔法についてはやはり二人の姉に敵うことはなかった。
気が付けば、グレースは恋愛の一つもしないうちにそれなりの年齢になっており、それがまたグレースの新たなコンプレックスとなった。
魔法の強壮薬を飲んだグレースが最初に唱えた呪文は変身の呪文だった。
娘時代の自分をイメージして変身したその姿は、事実よりも相当美化されたものだったが、当のグレースはそのことには気付かず、根拠のない自信に満足していた。
(なんと美しい…自分でも惚れ惚れするわい。
わしが、生涯独身だったのは、わしに魅力がなかったせいじゃあない!
勉強に打ちこんどったせいじゃ。
若い頃のわしはこんなに美しいんじゃ。
あの頃だって、その気になりさえすればモテモテだったに違いない!
今、それを証明して見せてやるぞ!)
鏡の前でもう一度にっこりと微笑んだグレースは、長い間使っていなかった箒に乗って町まで繰り出した。
*
(おぉ…男達が熱い眼差しでわしを見ておる。)
グレースは今まで感じたことのなかった視線に気を良くしていた。
「あのぉ…」
(き、来た!う、生まれて初めてのナンパじゃ!!)
「はい、なんでしょう?」
期待に胸を躍らせたグレースが振り向いた先にいたのは、どこからどう見ても冴えない男だった。
グレースは、期待の大きさの数倍大きな落胆を味わった。
「私、急いでるんです!」
グレースは男を睨み付け、吐き捨てるようにそう言うと、足早にその場所を離れた。
(ええぃ!腹の立つ!
なんで、あんな男がこのわしに声をかけるんじゃ!
身のほどを知れ!
今度会ったら、ヒキガエルに変えてくれるわ!)
記念すべき初ナンパを汚されたような気がして、それを考えるとグレースの怒りは時が経つごとに大きくなった。
そんな時、グレースの瞳に酒場の看板が映った。
酒でも飲んで気分転換をしようと思い、ふと立ち寄ったその店で、グレースは理想の男を発見する。
こんな男前が、わしの一言でこの通りじゃ!)
グレースは込み上げてくる嬉しさをこらえるのに必死だった。
根が真面目なグレースは、若い頃はひたすらに魔法の勉強に打ち込んだ。
グレースは元々さほど強い魔力を持ちあわせてはいなかった。
幼い頃から優秀な姉達と比べられては、いやな想いをし続けて育ってきた。
グレースが大人になるにつれ、そのコンプレックスも同時に大きく膨らみ続け、なんとかして姉達をしのぐ尊敬される魔法使いになりたいと強く想うようになり、寝る暇も惜しんで勉強した。
その努力の甲斐あって、グレースは薬の調合については一目置かれる存在になったが、魔法についてはやはり二人の姉に敵うことはなかった。
気が付けば、グレースは恋愛の一つもしないうちにそれなりの年齢になっており、それがまたグレースの新たなコンプレックスとなった。
魔法の強壮薬を飲んだグレースが最初に唱えた呪文は変身の呪文だった。
娘時代の自分をイメージして変身したその姿は、事実よりも相当美化されたものだったが、当のグレースはそのことには気付かず、根拠のない自信に満足していた。
(なんと美しい…自分でも惚れ惚れするわい。
わしが、生涯独身だったのは、わしに魅力がなかったせいじゃあない!
勉強に打ちこんどったせいじゃ。
若い頃のわしはこんなに美しいんじゃ。
あの頃だって、その気になりさえすればモテモテだったに違いない!
今、それを証明して見せてやるぞ!)
鏡の前でもう一度にっこりと微笑んだグレースは、長い間使っていなかった箒に乗って町まで繰り出した。
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(おぉ…男達が熱い眼差しでわしを見ておる。)
グレースは今まで感じたことのなかった視線に気を良くしていた。
「あのぉ…」
(き、来た!う、生まれて初めてのナンパじゃ!!)
「はい、なんでしょう?」
期待に胸を躍らせたグレースが振り向いた先にいたのは、どこからどう見ても冴えない男だった。
グレースは、期待の大きさの数倍大きな落胆を味わった。
「私、急いでるんです!」
グレースは男を睨み付け、吐き捨てるようにそう言うと、足早にその場所を離れた。
(ええぃ!腹の立つ!
なんで、あんな男がこのわしに声をかけるんじゃ!
身のほどを知れ!
今度会ったら、ヒキガエルに変えてくれるわ!)
記念すべき初ナンパを汚されたような気がして、それを考えるとグレースの怒りは時が経つごとに大きくなった。
そんな時、グレースの瞳に酒場の看板が映った。
酒でも飲んで気分転換をしようと思い、ふと立ち寄ったその店で、グレースは理想の男を発見する。
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