216 / 697
033. 獣人
5
しおりを挟む
*
「ねぇ、子猫ちゃん…名前はなんていうの?」
「え…わ…わし…じゃない!私は…グ、グレース…」
「グレース…子猫ちゃんにぴったりな素敵な名前だね…
私はダルシャ。
君の王子様さ。」
「お…王子様…」
グレースに優しい微笑を投げかけるその青年は、まさに夢に描いた王子様そのものだった。
グレースのものよりもさらに長い真っ直ぐな金の髪、均整の取れた細身の身体には、一目で上等とわかる生地で仕立てられた上着を身に付け、腰には輝く宝石で飾りたてられたきらびやかな長剣が携えられている。
青年の顔立ちはただ端正なだけではなく、透き通るような碧色の瞳は笑うとどこか無邪気でグレースの母性本能をくすぐった。
(近くで見るとますますかっこ良い…!
さ、最高じゃ!!)
「子猫ちゃん…今夜は二人っきりで素敵な夜を過ごそうね…」
「は…はい……」
夢心地のグレースはダルシャに手をひかれるままに、町外れの宿屋へ着いて行った…
*
*
*
「う~ん…」
明るい日差しの中、ダルシャがやっと目覚めた時には太陽はすでに高く上っていた。
「昨夜は最高だったよ…子猫……ん?」
寝起きにも関わらず甘い言葉を囁くダルシャは、隣に眠る人物を見て、一瞬すべての動きを停止する。
目をこすり、もう一度確認したその姿に、ダルシャは大きな声を上げ、ベッドから転がり落ちた。
「う~ん…誰じゃ、大きな声を出して…」
ようやく目を覚ましたグレースの目に映ったのは、引きつった顔をした裸の王子様だった。
「ダルシャ…一体…」
「お、お、お、おまえは誰だ!
い、い、いつの間にこんな所に…!」
「誰って、わしはグレース…」
そう言いかけて、グレースは変身の魔法が解けていることにはたと気付く。
(そうか…魔法の強壮薬の効き目が切れたんじゃな…
あの薬は確か一日は保つはずなのじゃが…昨夜、無茶をしすぎたせいか…)
グレースは昨夜の甘い一夜を思い出し、頬を赤く染めた。
「グレースだって…?
おまえがあのグレースだというのか?」
「え…そ、それは、その……」
「おのれ!妖しめ!
私を騙したのだな!」
言いよどむグレースに、興奮したダルシャの声がかぶさった。
「なんと、妖しじゃと…!
わしは魔法使いじゃ!妖しなどではないわ。
それに、何をそんなに怒ることがあるんじゃ!
わしは魔法で少しばかり若返っただけではないか!」
「少しだけだと!?
よくもそんなことが言えたものだな!
魔法で私をたぶらかすとは、なんと不届きな…」
「たぶからすだって?
部屋に入るなり襲いかかって来たのはそっちの方じゃないか!」
二人の罵り合いは止まらない。
「ねぇ、子猫ちゃん…名前はなんていうの?」
「え…わ…わし…じゃない!私は…グ、グレース…」
「グレース…子猫ちゃんにぴったりな素敵な名前だね…
私はダルシャ。
君の王子様さ。」
「お…王子様…」
グレースに優しい微笑を投げかけるその青年は、まさに夢に描いた王子様そのものだった。
グレースのものよりもさらに長い真っ直ぐな金の髪、均整の取れた細身の身体には、一目で上等とわかる生地で仕立てられた上着を身に付け、腰には輝く宝石で飾りたてられたきらびやかな長剣が携えられている。
青年の顔立ちはただ端正なだけではなく、透き通るような碧色の瞳は笑うとどこか無邪気でグレースの母性本能をくすぐった。
(近くで見るとますますかっこ良い…!
さ、最高じゃ!!)
「子猫ちゃん…今夜は二人っきりで素敵な夜を過ごそうね…」
「は…はい……」
夢心地のグレースはダルシャに手をひかれるままに、町外れの宿屋へ着いて行った…
*
*
*
「う~ん…」
明るい日差しの中、ダルシャがやっと目覚めた時には太陽はすでに高く上っていた。
「昨夜は最高だったよ…子猫……ん?」
寝起きにも関わらず甘い言葉を囁くダルシャは、隣に眠る人物を見て、一瞬すべての動きを停止する。
目をこすり、もう一度確認したその姿に、ダルシャは大きな声を上げ、ベッドから転がり落ちた。
「う~ん…誰じゃ、大きな声を出して…」
ようやく目を覚ましたグレースの目に映ったのは、引きつった顔をした裸の王子様だった。
「ダルシャ…一体…」
「お、お、お、おまえは誰だ!
い、い、いつの間にこんな所に…!」
「誰って、わしはグレース…」
そう言いかけて、グレースは変身の魔法が解けていることにはたと気付く。
(そうか…魔法の強壮薬の効き目が切れたんじゃな…
あの薬は確か一日は保つはずなのじゃが…昨夜、無茶をしすぎたせいか…)
グレースは昨夜の甘い一夜を思い出し、頬を赤く染めた。
「グレースだって…?
おまえがあのグレースだというのか?」
「え…そ、それは、その……」
「おのれ!妖しめ!
私を騙したのだな!」
言いよどむグレースに、興奮したダルシャの声がかぶさった。
「なんと、妖しじゃと…!
わしは魔法使いじゃ!妖しなどではないわ。
それに、何をそんなに怒ることがあるんじゃ!
わしは魔法で少しばかり若返っただけではないか!」
「少しだけだと!?
よくもそんなことが言えたものだな!
魔法で私をたぶらかすとは、なんと不届きな…」
「たぶからすだって?
部屋に入るなり襲いかかって来たのはそっちの方じゃないか!」
二人の罵り合いは止まらない。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる