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033. 獣人
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(なぜ、私がこんな所に…)
屈辱感に身を震わせながら、ダルシャは旅人達が通り過ぎるのを待つと、荷物の中から手鏡を取りだし、それをのぞきこんだ。
そこに映っていたのは、ダルシャが頭の中で想像した通りの、哀れな猫男と化した自分自身の姿だった…
その衝撃に、ダルシャは眩暈を起こし、ふらふらとよろめいた。
転びそうになった所をやっと足を踏ん張り、ダルシャは肩で大きく息をする。
(なんということだ…私がこんな無様な獣人になってしまうとは…
しかし、なぜこんなことに…?
落ちつくんだ…こんな時は、まず落ちつかなくては…!)
ダルシャは自分に言い聞かせ、深く息を吸う。
そして、これまでのことを思い出そうとした時、すぐにぴんと来るものがあった。
(あの魔法使いか……!)
ダルシャは、固く握り締めた拳を近くの木の幹に叩きつける。
はらはらと舞い落ちる木の葉を見ながら、ダルシャは不意に魔法使いの最後の言葉を思い出した。
(だからねずみが好きかなんて聞いたのだな!
畜生~~!)
*
*
*
(ふふふ…そろそろ、わしのかけた呪いに気付く頃かのう…?)
ダルシャとは少し離れたある町のレストランで、グレースは数日前にかけた呪いを思いだして一人ほくそ笑む。
「グレース、どうかしたのかい?」
貴族とおぼしき青年が、心配そうにグレースの顔をのぞきこんだ。
「……いいえ、なんでもないわ。
ちょっと昔の馬鹿な男を思い出しただけなの…」
「酷いな、グレース。
僕といる時に他の男のことを考えるなんて…」
「馬鹿ね、あなたが妬くような相手じゃないわ。
ねずみに弱い情けない男なの…」
そう言うとグレースは、男に向かって優しく微笑みかけた。
(そうだね…おまえさんがわしの前に両手をついて謝ったら許してやろうかね。)
グレースは、その状況を頭に思い浮かべながら、夢見るように微笑んだ。
~Fin~
屈辱感に身を震わせながら、ダルシャは旅人達が通り過ぎるのを待つと、荷物の中から手鏡を取りだし、それをのぞきこんだ。
そこに映っていたのは、ダルシャが頭の中で想像した通りの、哀れな猫男と化した自分自身の姿だった…
その衝撃に、ダルシャは眩暈を起こし、ふらふらとよろめいた。
転びそうになった所をやっと足を踏ん張り、ダルシャは肩で大きく息をする。
(なんということだ…私がこんな無様な獣人になってしまうとは…
しかし、なぜこんなことに…?
落ちつくんだ…こんな時は、まず落ちつかなくては…!)
ダルシャは自分に言い聞かせ、深く息を吸う。
そして、これまでのことを思い出そうとした時、すぐにぴんと来るものがあった。
(あの魔法使いか……!)
ダルシャは、固く握り締めた拳を近くの木の幹に叩きつける。
はらはらと舞い落ちる木の葉を見ながら、ダルシャは不意に魔法使いの最後の言葉を思い出した。
(だからねずみが好きかなんて聞いたのだな!
畜生~~!)
*
*
*
(ふふふ…そろそろ、わしのかけた呪いに気付く頃かのう…?)
ダルシャとは少し離れたある町のレストランで、グレースは数日前にかけた呪いを思いだして一人ほくそ笑む。
「グレース、どうかしたのかい?」
貴族とおぼしき青年が、心配そうにグレースの顔をのぞきこんだ。
「……いいえ、なんでもないわ。
ちょっと昔の馬鹿な男を思い出しただけなの…」
「酷いな、グレース。
僕といる時に他の男のことを考えるなんて…」
「馬鹿ね、あなたが妬くような相手じゃないわ。
ねずみに弱い情けない男なの…」
そう言うとグレースは、男に向かって優しく微笑みかけた。
(そうだね…おまえさんがわしの前に両手をついて謝ったら許してやろうかね。)
グレースは、その状況を頭に思い浮かべながら、夢見るように微笑んだ。
~Fin~
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