221 / 697
034. 迷いの森の守護者
2
しおりを挟む
「……当分は、あれで火が焚けるな…
……先日、早速、ミューズの後任を当たったのじゃが、皆、腰が痛いだのなんだのと言い訳をして、年配の妖精達は、わしの申し出を断ったのじゃ。
ミューズがやめてからもう一週間近く経ってしまった。
いくら仕事がないとはいえ、そう長い間、森を無人にしておくことは出来んからな。」
「なるほど!!
それで、エルミナに白羽の矢を立てられたということだったのですな!」
「そうじゃ、理由はもう一つあるが…」
「もう一つ…?はて?」
「忘れたのか?
あの森の祠のことを…」
「………あ…思い出しましたぞ!
それで、エルミナを選ばれたということなのですね!
さすがは長老様!」
長老とラヴァンは顔を見合わせて、微笑んだ…
*
「や…やっと着いた…ここが祠だな…」
そこは、エルミナの想像を遥かにしのぐ深い森だった。
森内部の地図を見ながら、やっとの思いで祠に着いたのは、あれから三日後のことだった。
「しかし、なんて森なんだ。
こりゃあ、地図をなくしたらとても外には出られなくなるぞ。」
独り言を言いながら、エルミナは祠の扉を開いた。
「な、な、なんじゃ、こりゃあ!
酷い…酷過ぎる…なんて散らかしようなんだ…
しかも、臭い…」
外から見ればごく小さなものに見えるその祠の中は不思議な空間と重なっており、異常な程に広い。
見回りに来る者がいないことから祠が汚い状況になっているという噂は以前耳にしたことはあったが、それは聞きしに勝る酷さだった。
床には物が散乱し、足を踏み入れる隙間さえない。
隅の方には赤い水玉模様の不気味なきのこが生えている。
また、別の一角には、ミューズが暇つぶしに作っていた木彫り像の木屑の山が天井までそびえたっていた。
森の守護者の任期は通常500年だが、もう何代も前から誰も片付けをしなかったため、もはや祠の中は収拾が着かない状況だ。
綺麗好きのエルミナならば、少しはマシにしてくれるだろうというのが長老のもう一つの狙いだったのだ。
(ミューズ様は一体どこで休んでおられたのだろう?)
そんな愚痴にも似た疑問を感じながら、エルミナは早速祠の掃除に取りかかった。
まずはすべてのものを外へ運び出し、隅から隅まで祠の掃除をする。
それだけで数ヶ月の歳月が流れた…
……先日、早速、ミューズの後任を当たったのじゃが、皆、腰が痛いだのなんだのと言い訳をして、年配の妖精達は、わしの申し出を断ったのじゃ。
ミューズがやめてからもう一週間近く経ってしまった。
いくら仕事がないとはいえ、そう長い間、森を無人にしておくことは出来んからな。」
「なるほど!!
それで、エルミナに白羽の矢を立てられたということだったのですな!」
「そうじゃ、理由はもう一つあるが…」
「もう一つ…?はて?」
「忘れたのか?
あの森の祠のことを…」
「………あ…思い出しましたぞ!
それで、エルミナを選ばれたということなのですね!
さすがは長老様!」
長老とラヴァンは顔を見合わせて、微笑んだ…
*
「や…やっと着いた…ここが祠だな…」
そこは、エルミナの想像を遥かにしのぐ深い森だった。
森内部の地図を見ながら、やっとの思いで祠に着いたのは、あれから三日後のことだった。
「しかし、なんて森なんだ。
こりゃあ、地図をなくしたらとても外には出られなくなるぞ。」
独り言を言いながら、エルミナは祠の扉を開いた。
「な、な、なんじゃ、こりゃあ!
酷い…酷過ぎる…なんて散らかしようなんだ…
しかも、臭い…」
外から見ればごく小さなものに見えるその祠の中は不思議な空間と重なっており、異常な程に広い。
見回りに来る者がいないことから祠が汚い状況になっているという噂は以前耳にしたことはあったが、それは聞きしに勝る酷さだった。
床には物が散乱し、足を踏み入れる隙間さえない。
隅の方には赤い水玉模様の不気味なきのこが生えている。
また、別の一角には、ミューズが暇つぶしに作っていた木彫り像の木屑の山が天井までそびえたっていた。
森の守護者の任期は通常500年だが、もう何代も前から誰も片付けをしなかったため、もはや祠の中は収拾が着かない状況だ。
綺麗好きのエルミナならば、少しはマシにしてくれるだろうというのが長老のもう一つの狙いだったのだ。
(ミューズ様は一体どこで休んでおられたのだろう?)
そんな愚痴にも似た疑問を感じながら、エルミナは早速祠の掃除に取りかかった。
まずはすべてのものを外へ運び出し、隅から隅まで祠の掃除をする。
それだけで数ヶ月の歳月が流れた…
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる