Gift

035. 廃坑の秘密

４

ヨハンの家は、町から離れた小さな集落の中にあった。
不思議な事に周りの家には人が住んでいないのか、どの家も朽ち果て、灯りもついていない。
お客が来ることも滅多にないらしく、ヨハンは僕らが来た事を喜んでくれた。
売り物の缶詰や食料も提供して、皆で楽しい夕食を食べ、そのうちヨハンは僕やケンタロウにも打ち解けてくれて、満足げな顔で眠りに就いた。



「本当にありがとう。
こんな高価なものを申し訳ないな。」

ヨハンが眠ってから、おじいさんと僕達は酒を飲みながら世間話を続けていた。



「そんなんええんです。
そんなことより…ヨハンはほんまに優しい良いお孫さんですね。
食事の後片付けまでして…」

「ありがとう。
あんたの言う通り、あいつは本当に良い子なんだ。
あんなに小さいのによく働いてくれる。
きっと、あいつなりに気を遣ってるのかもしれないな。
俺達は、毎日町まで野菜を売りに行くんだが、多分その時にあんたらの店をのぞいたんだな。
一緒に家に戻ったのに、いなくなってたから本当に心配したよ。」

「そうやったんですか。
そういえば、ヨハンのご両親はどうしはったんですか？」

「炭坑の事故でな…俺はその時たまたまその時は外にいたから助かったんだ。
あいつの母親は、夫の死の衝撃が大きすぎたんだな。
なかなか悲しみから立ち直れなくて、そのうち身体を壊してな…
ちょうど一年くらい経った時だったよ…」

父親が亡くなったのは、ヨハンが生まれて間もない頃で、そのせいでヨハンは両親の顔さえもはっきりとは覚えていないらしい。



「早いもんであれからもう六年も経ったんだな…
ここには炭坑で働いてる者達が暮らしてたんだ。
でも、廃坑になってからはみんな引っ越しちまった。
今残ってるのは俺ともう一軒だけだ。」

「そっか～…それにしても、たった六年でこんなに町は寂しくなるもんなんだな。」

「廃坑になっただけじゃないからな…
実は、あの廃坑には死んだ者達の亡霊が出ると言われている。
ヨハンもあそこで助けを求める声を聞いたって言うんだ。
だいたい、あの炭坑は事故が起こる前から少しおかしかった。
おかしな声を聞いた者がいたり、不思議なことがあったり…元々あんまり良くない場所だったのかもしれないな。」

僕はその話を聞いてぞっとした。
僕はその手の話が苦手なんだ。