Gift

035. 廃坑の秘密

７

「フェリーシア、知ってるのか！？」

「知ってるも何も、いたずら好きでお転婆で、悪名高きあのラルシュを知らない妖精はいないわ。
でも、ラルシュは何年か前に行方不明になって……あんまり酷い悪戯ばかりするから天罰が下って死んだって聞いたわ。」

「酷い！勝手に殺さないで！
ちょっと弱ってはいるけどまだ死んでないわ。
それに、今回は、私、良い事をしようとしてたのよ。
ここの地層がおかしな具合になって来てたから、それ以上掘らないように人間達を遠ざけようとしたんだけど、間に合わなくて……」

「そうだったの…」

なんと、ヨハンが聞いたっていう声は廃坑の奥に閉じ込められたラルシュという妖精だったんだ。
最初のうちは魔法で土を溶かしてなんとか外に出ようと頑張ったらしいけど、そのうち弱って来て魔法も使えなくなったとのことだった。
ロッシーには妖精達の声が聞こえないから、僕は二人の会話を聞きながらロッシーにそれを伝えた。



「ラルシュ、今から掘るから離れてろ！」

「ええか、ケンタロウ。
一気に力を加えたらあかんで。
ちょっとずつ、ちょっとずつやで。」

力を加減しながら、ケンタロウが蹄でけずるように土を掘り進めると、しばらくしてごろんとした塊が落ち、呆気なく穴が開いた。



「開いた！？」

そこから飛び出して来たのはフェリーシアとよく似た妖精だった。



「あぁぁぁ…やっと出られた！」

ラルシュは、大きく伸びをして、ほっとしたような声を出した。
フェリーシアに比べると、羽の動きも緩やかでちょっと元気がないようには見えたけど、たいしたことはなさそうだ。



「あんた、お礼くらい言ったらどうなの！？」

「あ、ありが……
まぁ、あんたったら獣人達と一緒にいるの？
わぁ、半獣人とトカゲもいる…
そっか、あんた、妖精に友達がいないから、獣人と仲良くしてるんだ！？」

「う、うるさい！
私が誰と何しようと勝手でしょ！」

フェリーシアとラルシュは早速口喧嘩を始めた。
ロッシーは妖精の姿も見えないから、ラルシュが出て来たことがわからず開いた穴の奥をのぞきこんでいた。