Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

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038. 星の乙女

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「おはよう!キップ!」

「おはよう!ジョナサン!
相変わらず早いな!」

「当たり前さ。
俺がしっかり働かなきゃ、干上がっちまうからな。」

ジョナサンはキップがこの町に越してきて、初めて出来た友達だった。
友達とはいっても、年はキップよりもずっと年上だ。
ジョナサンにはもったいないような綺麗な奥さんと可愛い女の子がいる。
それは、独り暮らしのキップにとっては、憧れの家族だ。
キップは、何度か、ジョナサンの家で昼食をご馳走になったことがある。
真心のこもった手料理に、優しい笑顔の奥さん、そして、無邪気な子供…


(良いなぁ…
俺も、いつか、こんな暮らしをしてみたい…)



そんなことを考えるキップの頭の中に浮かんだのは、花屋のあの娘の顔だった。




(ハッ…俺ったら何を考えてるんだ…)




「どうしたんだ?キップ。
顔が赤いぞ?!」

「いや…ちょっと暑くてさ。」



週に一度、買い物に行く町で、偶然見掛けた花屋の娘にキップは恋をした。
それほど美人というわけではないが、彼女の笑顔は春の花畑のように穏やかで温かかった。

キップは、その笑顔に引き寄せられ、気が付けば店先に立っていた。



「いらっしゃいませ!
何を差上げましょうか?」 

「えっ?
あ…あ…えっと…俺…あの…」

声をかけられ、不意に我に返ったキップは、自分でも何を言っているのかわからない程、舞いあがっていた。
娘は怪訝な顔をしている



(は、早く、なにか言わなきゃ、変に思われちまう!)

「えっと…えっと…」

そうは思っても焦ると余計に決められない。



「お迷いでしたら、これなんかいかがですか?」

「え…?は、はいっ!!そ、それを下さい!」







キップは家に帰り、テーブルの上に薔薇の花を飾った。
薔薇を見ていると鮮明にあの娘のことが思い出され、キップは幸せな気分になれた。



(可愛かったなぁ…あの娘…)



夜になるといつも憂鬱な気分になるのが、その白い薔薇の花のお陰で少しだけ慰められた。




(ありがとう…)


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