281 / 697
043. 妾腹の王族
2
しおりを挟む
アンドレアスとイングリッドが結婚したのは、二人がまだ11歳と9歳の時のことだった。
親同士が決めたもので、そこには欠片程の愛情もなかった。
イングリッドと一緒にいる時間が長くなればなるほど、アンドレアスは妃のことを不快に感じるようになっていた。
わがままで高慢で無慈悲なイングリッドは、アンドレアスが最も嫌いな人格をしていた。
二人の間には共通の話題さえない。
同じものを見ても、二人の感じ方はまるで違うものだった。
しかし、アンドレアスにはそれをどうすることも出来なかった…
イングリッド王女の母国は、戦を重ねる度に国土を広げ強大になった国だ。
だが、国としての歴史も浅く、それ以上に他国からの評判も良くない。
アルタナ国は、それとは真逆の国だった。
歴史も古く、歴代の国王も人格者として人望の厚い王ばかりだった。
イングリッドの父は自分にはないものを求め、イングリッドとアンドレアスの結婚を望んだ。
しかし、アンドレアスの父たる国王がそんなことを了承するはずがなかった。
国王は、アンドレアスがまだ子供だということを理由に断り続けた。
理由はそれだけではなかったが、賢明な国王はそのことを口にすることはなかった。
イングリッドの父親は、それでも諦めることなく幾度となく結婚を迫って来たが、どうしても了承しない国王に対し、ついにその怒りを爆発させた。
イングリッドと結婚させなければ、アルタナ国に戦を仕掛けると言ってきたのだ。
戦になれば、多くの犠牲者が出る。
国王は、国民のためを考え、とうとうその縁談を受け入れた。
結婚して十数年後、二人の間にカイラが生まれた。
アンドレアスは、これで国王としての義務は果たした…そう思った。
イングリッドとの結婚にそんなからくりがあったことを知らされたのは、カイラが生まれた後のことだった。
元々、イングリッドに対して愛情はなかったが、いつしかそんな気持ちは憎悪にも近いものとなっていた。
しかし、自分が彼女と別れる等と言い出せば、イングリッドの母国がアルタナ国に攻め入って来るかもしれない。
それを思うと、アンドレアスにはどうすることも出来ない。
ただ一つ出来ることといえば、出来るだけイングリットを避ける事。
やがて、二人は公の場以外では口をきくことさえなくなっていった。
イングリッドには若い将校の愛人がいることをアンドレアスは知っていたが、それを咎めることもしなかった。
却ってその方が都合が良い。
自分への興味など失って、自ら去ってくれれば良いと考えていた。
親同士が決めたもので、そこには欠片程の愛情もなかった。
イングリッドと一緒にいる時間が長くなればなるほど、アンドレアスは妃のことを不快に感じるようになっていた。
わがままで高慢で無慈悲なイングリッドは、アンドレアスが最も嫌いな人格をしていた。
二人の間には共通の話題さえない。
同じものを見ても、二人の感じ方はまるで違うものだった。
しかし、アンドレアスにはそれをどうすることも出来なかった…
イングリッド王女の母国は、戦を重ねる度に国土を広げ強大になった国だ。
だが、国としての歴史も浅く、それ以上に他国からの評判も良くない。
アルタナ国は、それとは真逆の国だった。
歴史も古く、歴代の国王も人格者として人望の厚い王ばかりだった。
イングリッドの父は自分にはないものを求め、イングリッドとアンドレアスの結婚を望んだ。
しかし、アンドレアスの父たる国王がそんなことを了承するはずがなかった。
国王は、アンドレアスがまだ子供だということを理由に断り続けた。
理由はそれだけではなかったが、賢明な国王はそのことを口にすることはなかった。
イングリッドの父親は、それでも諦めることなく幾度となく結婚を迫って来たが、どうしても了承しない国王に対し、ついにその怒りを爆発させた。
イングリッドと結婚させなければ、アルタナ国に戦を仕掛けると言ってきたのだ。
戦になれば、多くの犠牲者が出る。
国王は、国民のためを考え、とうとうその縁談を受け入れた。
結婚して十数年後、二人の間にカイラが生まれた。
アンドレアスは、これで国王としての義務は果たした…そう思った。
イングリッドとの結婚にそんなからくりがあったことを知らされたのは、カイラが生まれた後のことだった。
元々、イングリッドに対して愛情はなかったが、いつしかそんな気持ちは憎悪にも近いものとなっていた。
しかし、自分が彼女と別れる等と言い出せば、イングリッドの母国がアルタナ国に攻め入って来るかもしれない。
それを思うと、アンドレアスにはどうすることも出来ない。
ただ一つ出来ることといえば、出来るだけイングリットを避ける事。
やがて、二人は公の場以外では口をきくことさえなくなっていった。
イングリッドには若い将校の愛人がいることをアンドレアスは知っていたが、それを咎めることもしなかった。
却ってその方が都合が良い。
自分への興味など失って、自ら去ってくれれば良いと考えていた。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
初めまして婚約者様
まる
恋愛
「まあ!貴方が私の婚約者でしたのね!」
緊迫する場での明るいのんびりとした声。
その言葉を聞いてある一点に非難の視線が集中する。
○○○○○○○○○○
※物語の背景はふんわりしています。スルッと読んでいただければ幸いです。
目を止めて読んで下さった方、お気に入り、しおりの登録ありがとう御座いました!少しでも楽しんで読んでいただけたなら幸いです(^人^)
年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる