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043. 妾腹の王族
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そんな時、アンドレアスはある使用人と出会う。
新しくアンドレアスの身の回りの世話をすることになったのはグラディスという若い女性だった。
イングリッドとは違い、グラディスは優しさと女性らしさを兼ね備えていた。
元々は、貴族の娘だったらしく、そのせいかどこか気品があり教養もある女性だった。
グラディスは、彼と接するうちに強張ったアンドレアスの心をほぐし、温かい風を送りこんで癒してくれた。
そんな二人が、恋に落ちるのはごく自然なことだった…
カイラが三歳になった頃、グラディスとアンドレアスの間に男の子が生まれた。
子供が出来たらしいということがわかるとすぐにアンドレアスはグラディスに暇を出し、城下に彼女のための家を手配した。
イングリッドはとても嫉妬深い女だ。
二人は慎重に交際を続けてはいたが、彼女のおなかが大きくなってしまっては、疑惑を抱かれてしまうかもしれない。
そう思い、アンドレアスはグラディスを城から遠ざけたのだ。
「ゼトラ…
おまえは、本当に愛らしい顔をしているな。
まるで、天使のようだ…」
「ゼトラは、あなたにそっくりですね。」
「そうか、やはりそう思うか?
それに、ゼトラは私と同じ場所にほくろがあるんだ。
ほら、ここだ。親子でもこんな事は珍しいとは思わないか?」
「そうですね。
この子は、よほどあなたと深い縁があって生まれて来たんでしょうね。」
アンドレアスは、ゼトラを溺愛した。
「ゼトラ」という名前をつけたのも彼だった。
彼の敬愛する祖父・ゼトルスをもじってつけた名前だ。
カイラが生まれた時とは明らかに違う自分の感情に、アンドレアス自身も少なからず驚いていた。
カイラを愛しいと思うことがなかったことから、アンドレアスは自分が子供嫌いなのだと思いこんでいたのだが、そうではなかったことがゼトラの誕生により明白になった。
いつ、どこにいても、ゼトラの笑顔が頭に浮かび、彼の柔らかい肌の感触が思い出される…
ゼトラが成長するにつれ、アンドレアスは彼の人間性にもひかれていった。
幼い頃から気に食わないことがあると大声でわめき、ものを投げたり何かにあたっていたカイラとは違い、ゼトラは子供とは思えないほど物分りが良く、動物や植物にも優しい。
教えたことはなんでも一度で覚え、人への気配りもとても細やかだ。
いつしかアンドレアスは、ゼトラに国王の座を譲りたいと考えるようになっていた。
ゼトラが三歳になった時、ついにアンドレアスはアルタナ王の証ともいえるルビーのペンダントをグラディスに手渡した。
「アンドレアス様、これは?」
「これは、代々、我が一族に伝わるペンダントだ。
王族の証…みたいなものだと思ってくれれば良い。」
「そ…そんな大切なものを、なぜ…!?」
「私は…アルタナの国をいずれゼトラに継がせたいと思っている。」
「でも、あなたにはカイラ様が…」
「……もう少し、待っていてくれ。
必ず、おまえ達を城に向かえる環境を整えるから…」
「アンドレアス様……!!」
新しくアンドレアスの身の回りの世話をすることになったのはグラディスという若い女性だった。
イングリッドとは違い、グラディスは優しさと女性らしさを兼ね備えていた。
元々は、貴族の娘だったらしく、そのせいかどこか気品があり教養もある女性だった。
グラディスは、彼と接するうちに強張ったアンドレアスの心をほぐし、温かい風を送りこんで癒してくれた。
そんな二人が、恋に落ちるのはごく自然なことだった…
カイラが三歳になった頃、グラディスとアンドレアスの間に男の子が生まれた。
子供が出来たらしいということがわかるとすぐにアンドレアスはグラディスに暇を出し、城下に彼女のための家を手配した。
イングリッドはとても嫉妬深い女だ。
二人は慎重に交際を続けてはいたが、彼女のおなかが大きくなってしまっては、疑惑を抱かれてしまうかもしれない。
そう思い、アンドレアスはグラディスを城から遠ざけたのだ。
「ゼトラ…
おまえは、本当に愛らしい顔をしているな。
まるで、天使のようだ…」
「ゼトラは、あなたにそっくりですね。」
「そうか、やはりそう思うか?
それに、ゼトラは私と同じ場所にほくろがあるんだ。
ほら、ここだ。親子でもこんな事は珍しいとは思わないか?」
「そうですね。
この子は、よほどあなたと深い縁があって生まれて来たんでしょうね。」
アンドレアスは、ゼトラを溺愛した。
「ゼトラ」という名前をつけたのも彼だった。
彼の敬愛する祖父・ゼトルスをもじってつけた名前だ。
カイラが生まれた時とは明らかに違う自分の感情に、アンドレアス自身も少なからず驚いていた。
カイラを愛しいと思うことがなかったことから、アンドレアスは自分が子供嫌いなのだと思いこんでいたのだが、そうではなかったことがゼトラの誕生により明白になった。
いつ、どこにいても、ゼトラの笑顔が頭に浮かび、彼の柔らかい肌の感触が思い出される…
ゼトラが成長するにつれ、アンドレアスは彼の人間性にもひかれていった。
幼い頃から気に食わないことがあると大声でわめき、ものを投げたり何かにあたっていたカイラとは違い、ゼトラは子供とは思えないほど物分りが良く、動物や植物にも優しい。
教えたことはなんでも一度で覚え、人への気配りもとても細やかだ。
いつしかアンドレアスは、ゼトラに国王の座を譲りたいと考えるようになっていた。
ゼトラが三歳になった時、ついにアンドレアスはアルタナ王の証ともいえるルビーのペンダントをグラディスに手渡した。
「アンドレアス様、これは?」
「これは、代々、我が一族に伝わるペンダントだ。
王族の証…みたいなものだと思ってくれれば良い。」
「そ…そんな大切なものを、なぜ…!?」
「私は…アルタナの国をいずれゼトラに継がせたいと思っている。」
「でも、あなたにはカイラ様が…」
「……もう少し、待っていてくれ。
必ず、おまえ達を城に向かえる環境を整えるから…」
「アンドレアス様……!!」
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