283 / 697
043. 妾腹の王族
4
しおりを挟む
アンドレアスは、グラディスとゼトラと三人で暮らす幸せな日々を夢見た。
もしも、それでイングリッドの国が攻め入って来るというのなら、その時は立ち上がろう!
自分は命を賭けてグラディスとゼトラを守り抜く!
アンドレアスの心の中には、そこまでの強い決意が固まっていた。
そんなことからか、アンドレアスは以前にも増してグラディスの元へ足繁く通うようになった。
そして、そんな彼の行動が、思わぬ悲劇を生むこととなった…
「グラディス!
ゼトラ?
いないのか?」
アンドレアスが、グラディスの家を訪れるのはいつも夜…
それなのに、二人がいないのだ。
アンドレアスはしばらく部屋で待っていたが、二人が一向に戻る様子がなかったので、近所に住むグラディスの使用人の家を訪れた。
この男も元は城に仕えてた男で、今はもう引退していたが信用の置ける人間だったためグラディスの傍に置いておいたのだ。
「これはこれは、アンドレアス様…
こんな夜更けにどうかなさいましたか?」
「グラディスとゼトラがいないのだが…おまえ、なにか知らないか?」
「お二人なら、夕方近くに、アンドレアス様のご用意された馬車に乗って行かれましたが…
会われなかったのですか?」
「私の用意した馬車だと?
私はそんなもの、出してはおらぬ!」
「そ、そんな…数日を森の中で過ごそうとアンドレアス様がおっしゃっていると言って馬車が…」
「だ、誰がそんなことを!!」
次の日、アンドレアスが森へ続く道を密かに捜索させた所、谷底からバラバラに押しつぶされた馬と馬車がみつかり、その数日後、御者らしき男とグラディスの遺体が近くの川の中からみつかった…
小さなゼトラの身体は川の流れに流され、海へ出てしまったようだ。
「なんてことだ…」
彼の名を語り、二人を連れ出したのが何者なのかはわからない…
おそらくは、イングリッドなのではないかと思われたが、そんなことは何の確証もないただの推測だ。
それに、犯人を探し出した所で、グラディスとゼトラが戻って来るわけではないのだ。
それからのアンドレアスは抜け殻のようだった。
ただ、周りから言われるままに人形のように執務をこなし、何の希望もないままに無為な日々を過ごしていた。
やがて、年月は過ぎ、カイラは立派な青年に成長していた。
成長すればするほどに、自分との違いを感じる息子を見るに付け、アンドレアスの脳裏にはゼトラのことが鮮明に思い出される。
しかし、そんなゼトラはもういない…
グラディスと共に、あの天高くへ昇ってしまったのだ…
アンドレアスは痛む心を忘れるように、広い空を眺めた。
もしも、それでイングリッドの国が攻め入って来るというのなら、その時は立ち上がろう!
自分は命を賭けてグラディスとゼトラを守り抜く!
アンドレアスの心の中には、そこまでの強い決意が固まっていた。
そんなことからか、アンドレアスは以前にも増してグラディスの元へ足繁く通うようになった。
そして、そんな彼の行動が、思わぬ悲劇を生むこととなった…
「グラディス!
ゼトラ?
いないのか?」
アンドレアスが、グラディスの家を訪れるのはいつも夜…
それなのに、二人がいないのだ。
アンドレアスはしばらく部屋で待っていたが、二人が一向に戻る様子がなかったので、近所に住むグラディスの使用人の家を訪れた。
この男も元は城に仕えてた男で、今はもう引退していたが信用の置ける人間だったためグラディスの傍に置いておいたのだ。
「これはこれは、アンドレアス様…
こんな夜更けにどうかなさいましたか?」
「グラディスとゼトラがいないのだが…おまえ、なにか知らないか?」
「お二人なら、夕方近くに、アンドレアス様のご用意された馬車に乗って行かれましたが…
会われなかったのですか?」
「私の用意した馬車だと?
私はそんなもの、出してはおらぬ!」
「そ、そんな…数日を森の中で過ごそうとアンドレアス様がおっしゃっていると言って馬車が…」
「だ、誰がそんなことを!!」
次の日、アンドレアスが森へ続く道を密かに捜索させた所、谷底からバラバラに押しつぶされた馬と馬車がみつかり、その数日後、御者らしき男とグラディスの遺体が近くの川の中からみつかった…
小さなゼトラの身体は川の流れに流され、海へ出てしまったようだ。
「なんてことだ…」
彼の名を語り、二人を連れ出したのが何者なのかはわからない…
おそらくは、イングリッドなのではないかと思われたが、そんなことは何の確証もないただの推測だ。
それに、犯人を探し出した所で、グラディスとゼトラが戻って来るわけではないのだ。
それからのアンドレアスは抜け殻のようだった。
ただ、周りから言われるままに人形のように執務をこなし、何の希望もないままに無為な日々を過ごしていた。
やがて、年月は過ぎ、カイラは立派な青年に成長していた。
成長すればするほどに、自分との違いを感じる息子を見るに付け、アンドレアスの脳裏にはゼトラのことが鮮明に思い出される。
しかし、そんなゼトラはもういない…
グラディスと共に、あの天高くへ昇ってしまったのだ…
アンドレアスは痛む心を忘れるように、広い空を眺めた。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ガチャから始まる錬金ライフ
あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。
手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。
他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。
どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。
自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる