340 / 697
050. 過去・現在・未来
8
しおりを挟む
「ビリー!大変だ!
ドリーンがたった今、そこで馬車に…!
とにかく早く来てくれ!」
「ドリーンが…?」
ビリーとジョシュアは、男に着いて外へ飛び出した。
すぐ近くの曲がり角に馬車が停まり、人だかりがしていた。
人垣をかきわけると、その中央には口から赤い血を流す女性がぐったりと横たわっていた。
つい先ほど見た写真の女性だった。
真っ白なウェディングドレスを着て、ビリーの隣で微笑んでいたあの女性だ。
「ドリーン!!」
ビリーは、自分の妻とされるその女性の名を叫んだが、女性は身動き一つしなかった…
周りから、女性のすすり泣きが聞こえる。
誰かが、ビリーの肩を後ろから軽く叩いた。
(……う…嘘だ…
まだ、話したこともないのに、俺の妻が死んでしまった…
そんな…そんなことって…)
実の父親だけではなく、やり直した人生で出会った妻までもを同じ馬車の事故で失うなんて…
ビリーは自分の運命を呪った。
やがてその場に駆け付けた医師によって、ドリーンの死亡が確認され、ドリーンの遺体はそのままビリーの家に運ばれた。
*
「兄さん、何か少しくらい食べといた方が良いんじゃないか?
悲しいのはわかるけど、こんな時こそ…」
「ジョシュア…
勝手言ってすまないが、今夜は俺を一人にしてくれ…
俺なら大丈夫だから…」
「そうか…わかったよ。
じゃ、俺は家にいるから、なにかあったらすぐに連絡してくれよ。」
「あぁ…ありがとう、ジョシュア…」
ジョシュアを見送ったビリーはベッドに横たわるドリーンをみつめた。
ドリーンは、馬車にぶつかった時の衝撃で内臓を損傷したらしく、外傷はほとんどなかった。
それゆえに、ただ眠っているように見える。
初めて出会った女のことでこれほどまでに悲しい気持ちになることがビリー自身にも不思議だった。
まるで、本当の妻を失ったような寂しさをビリーは感じていた。
(やり直した人生は幸せなものだと思っていたが…
やり直した途端に、こんな美しい妻を失ってしまうとは、俺はつくづく不幸な星の元に生まれてるんだな…
あんまりだ…やっと、真面目に生きる気持ちにもなれたのに…
これからは一生懸命働いて、そして子供を作り、この美しい妻と幸せな家庭を作っていこうと思ってたのに…)
ビリーは、ドリーンの髪をそっと撫でた。
しなやかな髪の手触りはとても死人とは思えなかった。
ビリーは漠然と明日のことを考える。
教会へはジョシュアが連絡してくれた。
(そういえば…俺は喪服は持ってるんだろうか?)
ふとそんなことを考え、ビリーはクローゼットをのぞいてみたが、それらしき服はない。
どれを着て行くべきか、それとも誰かに借りた方が良いのかを考えていた所、ビリーは自分の胸ポケットにある二枚のカードに気が付いた。
(そうだ!
現在のカードがあったんだ!!)
ビリーは、柱時計を見上げた。
時計の針は11時45分を指していた。
(現在のカードは、その日あったことをやりなおせるカード…
間に合った!!)
高鳴る胸を抑えながら、ビリーはカードに裏側に願い事を書いた。
「ドリーンは馬車にひかれない。
無事、何事もなく家に戻る」
(確か、あの時の時刻は1時頃だったな…
そうだ…時計を見た時は1時3分前で、ジョシュアとほんの少ししゃべってたら外で大きな音がして…)
時刻は1時ちょうどにしておいた。
そしてビリーはカードを枕の下に入れると酒を飲んで横になった。
(頼む…どうか、生き帰ってくれ…!
俺の人生を幸せなものにしてくれ…!)
ドリーンがたった今、そこで馬車に…!
とにかく早く来てくれ!」
「ドリーンが…?」
ビリーとジョシュアは、男に着いて外へ飛び出した。
すぐ近くの曲がり角に馬車が停まり、人だかりがしていた。
人垣をかきわけると、その中央には口から赤い血を流す女性がぐったりと横たわっていた。
つい先ほど見た写真の女性だった。
真っ白なウェディングドレスを着て、ビリーの隣で微笑んでいたあの女性だ。
「ドリーン!!」
ビリーは、自分の妻とされるその女性の名を叫んだが、女性は身動き一つしなかった…
周りから、女性のすすり泣きが聞こえる。
誰かが、ビリーの肩を後ろから軽く叩いた。
(……う…嘘だ…
まだ、話したこともないのに、俺の妻が死んでしまった…
そんな…そんなことって…)
実の父親だけではなく、やり直した人生で出会った妻までもを同じ馬車の事故で失うなんて…
ビリーは自分の運命を呪った。
やがてその場に駆け付けた医師によって、ドリーンの死亡が確認され、ドリーンの遺体はそのままビリーの家に運ばれた。
*
「兄さん、何か少しくらい食べといた方が良いんじゃないか?
悲しいのはわかるけど、こんな時こそ…」
「ジョシュア…
勝手言ってすまないが、今夜は俺を一人にしてくれ…
俺なら大丈夫だから…」
「そうか…わかったよ。
じゃ、俺は家にいるから、なにかあったらすぐに連絡してくれよ。」
「あぁ…ありがとう、ジョシュア…」
ジョシュアを見送ったビリーはベッドに横たわるドリーンをみつめた。
ドリーンは、馬車にぶつかった時の衝撃で内臓を損傷したらしく、外傷はほとんどなかった。
それゆえに、ただ眠っているように見える。
初めて出会った女のことでこれほどまでに悲しい気持ちになることがビリー自身にも不思議だった。
まるで、本当の妻を失ったような寂しさをビリーは感じていた。
(やり直した人生は幸せなものだと思っていたが…
やり直した途端に、こんな美しい妻を失ってしまうとは、俺はつくづく不幸な星の元に生まれてるんだな…
あんまりだ…やっと、真面目に生きる気持ちにもなれたのに…
これからは一生懸命働いて、そして子供を作り、この美しい妻と幸せな家庭を作っていこうと思ってたのに…)
ビリーは、ドリーンの髪をそっと撫でた。
しなやかな髪の手触りはとても死人とは思えなかった。
ビリーは漠然と明日のことを考える。
教会へはジョシュアが連絡してくれた。
(そういえば…俺は喪服は持ってるんだろうか?)
ふとそんなことを考え、ビリーはクローゼットをのぞいてみたが、それらしき服はない。
どれを着て行くべきか、それとも誰かに借りた方が良いのかを考えていた所、ビリーは自分の胸ポケットにある二枚のカードに気が付いた。
(そうだ!
現在のカードがあったんだ!!)
ビリーは、柱時計を見上げた。
時計の針は11時45分を指していた。
(現在のカードは、その日あったことをやりなおせるカード…
間に合った!!)
高鳴る胸を抑えながら、ビリーはカードに裏側に願い事を書いた。
「ドリーンは馬車にひかれない。
無事、何事もなく家に戻る」
(確か、あの時の時刻は1時頃だったな…
そうだ…時計を見た時は1時3分前で、ジョシュアとほんの少ししゃべってたら外で大きな音がして…)
時刻は1時ちょうどにしておいた。
そしてビリーはカードを枕の下に入れると酒を飲んで横になった。
(頼む…どうか、生き帰ってくれ…!
俺の人生を幸せなものにしてくれ…!)
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる