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054. 潜む影
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「あぁ、食った、食った。
もう入らないぞ!」
俺は、宿屋で埃っぽかった身体をきれいに洗い流し、特別たいしたものはなかったとはいえ腹いっぱい食べて、心の底から満足した。
その間もランスロットは落ちつきなくあたりをきょろきょろしていたが、変わったことはなにもなかった。
「ほら、何もなかっただろ?」
ランスロットは、それでもまだ何か心にひっかかってるらしく、その晩は、奴の希望により同じ部屋に泊まることになった。
今までの俺なら、誰かと同じ部屋に泊まるなんてことは絶対に出来なかったが、奴には俺の秘密はもうバレてしまってる。
だから、それで奴が安心するなら…と、同室にすることを承諾したんだ。
……なぁんて、路銀を全部出してもらってる身で、そんな偉そうなことは言えないんだけど…
「……ええ、確かに…
でも、夜はわかりませんよ。
今夜は私が朝までここで見張ってますから、ルークさんはゆっくりお休み下さい。」
ランスロットは、きっちりと服を着込み、腰に剣を差したままの姿でそう言った。
「おまえだけに、そんなことをさせるなんて、出来るわけないだろ。
……って、言いたい所だけど、俺、本当に眠いんだ。
町に着いてからも何も変わったことはなかったし、今夜も大丈夫だと思うぜ。
おまえも休めよ。
今日は疲れただろ?」
「私なら大丈夫です。」
そう答えた奴の表情は、まさに剣士って感じで毅然としてた。
ただでさえ格好良いのに、性格までこんなじゃ決まり過ぎだろ!
奴に引き換え、俺と来たら、ぼさぼさの髪でちっちゃくなる時間が迫ってるから裸で毛布にくるまってる。
なんでこうも違うんだ!?
俺は、奴にちょっとしたジェラシーを感じていた。
だけど、そんなジェラシーもどこへやら。
すでに俺は眠気に負けそうになっていて、堪える間もなく大きなあくびをしてしまった。
「じゃ、夜中になったら起こしてくれ。
交代するから。
あ、それと、俺、もうじき身体があれだけど……気にしないでくれ。
でも、うっかりして俺の上に寝転んだりはしないでくれよ。
潰れてしまうのはいやだからな。」
夜中に起きられる自信なんかなかったが、一応、悔しいのと申し訳ない気持ちから、俺はそんなことを口走った。
瞼はもう半分閉じている。
「わかってますよ。
さ、ルークさんは早くお休み下さい。」
その声を聞き終わったと同時に、俺はすっかり眠りに落ちていた。
「あぁ、食った、食った。
もう入らないぞ!」
俺は、宿屋で埃っぽかった身体をきれいに洗い流し、特別たいしたものはなかったとはいえ腹いっぱい食べて、心の底から満足した。
その間もランスロットは落ちつきなくあたりをきょろきょろしていたが、変わったことはなにもなかった。
「ほら、何もなかっただろ?」
ランスロットは、それでもまだ何か心にひっかかってるらしく、その晩は、奴の希望により同じ部屋に泊まることになった。
今までの俺なら、誰かと同じ部屋に泊まるなんてことは絶対に出来なかったが、奴には俺の秘密はもうバレてしまってる。
だから、それで奴が安心するなら…と、同室にすることを承諾したんだ。
……なぁんて、路銀を全部出してもらってる身で、そんな偉そうなことは言えないんだけど…
「……ええ、確かに…
でも、夜はわかりませんよ。
今夜は私が朝までここで見張ってますから、ルークさんはゆっくりお休み下さい。」
ランスロットは、きっちりと服を着込み、腰に剣を差したままの姿でそう言った。
「おまえだけに、そんなことをさせるなんて、出来るわけないだろ。
……って、言いたい所だけど、俺、本当に眠いんだ。
町に着いてからも何も変わったことはなかったし、今夜も大丈夫だと思うぜ。
おまえも休めよ。
今日は疲れただろ?」
「私なら大丈夫です。」
そう答えた奴の表情は、まさに剣士って感じで毅然としてた。
ただでさえ格好良いのに、性格までこんなじゃ決まり過ぎだろ!
奴に引き換え、俺と来たら、ぼさぼさの髪でちっちゃくなる時間が迫ってるから裸で毛布にくるまってる。
なんでこうも違うんだ!?
俺は、奴にちょっとしたジェラシーを感じていた。
だけど、そんなジェラシーもどこへやら。
すでに俺は眠気に負けそうになっていて、堪える間もなく大きなあくびをしてしまった。
「じゃ、夜中になったら起こしてくれ。
交代するから。
あ、それと、俺、もうじき身体があれだけど……気にしないでくれ。
でも、うっかりして俺の上に寝転んだりはしないでくれよ。
潰れてしまうのはいやだからな。」
夜中に起きられる自信なんかなかったが、一応、悔しいのと申し訳ない気持ちから、俺はそんなことを口走った。
瞼はもう半分閉じている。
「わかってますよ。
さ、ルークさんは早くお休み下さい。」
その声を聞き終わったと同時に、俺はすっかり眠りに落ちていた。
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