Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

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056. 春雷

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「はぁぁぁ……」



何本もの空の酒瓶を目の前にして、ジェシカが深いため息を吐いた…



「おいおい、ジェシカ、いいかげんにしろよ。
一体、何度目のため息なんだよ。」

「そんなこと、いちいち数えてなんかいないよ。」

「ジェシカ、知らないのか?
ため息を一つ吐く度、幸せが一つ逃げていくって言い伝えをさ…
そんなにため息ばっかり吐いてたんじゃ、幸せは逃げていくばかりだぞ!」

「構わないさ…もう私の周りに幸せなんて一つもないから。
最近はどこへ行っても宝はみつからない、なけなしの金をはたいて買った地図は偽物だったし、良いことなんてまったくないんだ。
私の幸せはもう一つも残ってないんだよ。」

「そういや、おまえ、皿洗いのバイトをやってるって話じゃないか!」

「やってないよ。」

「そうか…じゃ、ガセだったんだな。」

「そうじゃなくて、さっきクビになったからさ。
しかも、割った皿代を差し引いたら、給料なんて出せないって言われてさ。
これから、どうすりゃ良いんだろうね…
あ、ここの飲み代はつけといておくれよ。
今、払えなんて言われても、私にゃ逆立ちしたってそんな金はないからね。」

「ジェシカ…勘弁してくれよ…」



まるで、ジェシカの沈んだ気持ちが感染してしまったかのような店内には、ジェシカが酒を飲む時の喉を鳴らす音と、相変わらずの深いため息、そして、マスターがグラスを磨く音だけが聞こえるだけだった。



「なんだ、なんだ、この店は!
まるで、葬式かなんかみてぇだな!」



そう言いながら入って来た小太りの男は、マスターにビールを注文した。



「ジェシカ、どうした?
やけにシケた面してるじゃねぇか!」

「私のことは、ほっといておくれ…」

「サム、よしな。
今日のジェシカは、ため息の吐き過ぎで疫病神がとりついてるんだ。」

「疫病神~?
そいつはいいや!」

サムと呼ばれる男は、鼓膜がびりびりするような大声で笑っている。



「おまえさんは、ジェシカとは違ってやけに上機嫌なんだな!」

「当たり前さ!
……実はな…先週、競馬ですごい大穴が出たのを知ってるか?」

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