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067. 手紙
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(無理だ…もうどうしようもない…)
ポストには毎日大量の督促状が舞いこみ、携帯にまで頻繁に電話がかかってくる。
きっとこれから先は怖い人達が家にまで来るに違いない。
気持ちがどっと重くなるのを幸治は感じた。
(母さん、僕、もう疲れたよ…)
幸治は、押入れの中から小さな箱を取り出した。
その中に入っているのは、母親の形見のようなもの。
眼鏡や化粧道具、そして薬袋。
袋の中には薬が入っていた。
それは、母親の死後、ティッシュの箱の中からみつかった母親が飲まずに隠していた痛み止めの薬と睡眠薬だった。
幸治の母がなぜそれらを飲まなかったのか、今となってはわからないが、おそらくは薬を飲むと命が縮まるように思ったのではないかと幸治は考えていた。
「今、死ぬわけにはいかない」…それが母親の口癖だったから。
給料日に、幸治は街をうろつき、新しい服と靴と小さ目の旅行鞄を買った。
今まで使っていたものは、どれも擦りきれて酷い有様だったから。
幸治は今の人生を投げ出す事を決めた。
もうそれ以外に、方法はないように思えたのだ。
最後に、幸治の母親がテレビを見ながら行ってみたいと言っていた所を訪ねる事にした。
いつもなら好きなものを買うゆとりなど一銭もない幸治だが、もうこの金は全部使ってしまって良いのだから。
幸治は、母親の写真と薬を忘れずに詰め、旅支度を整えた。
昨日の遅くから振りだした雨も朝にはすっきりとあがっていた。
(不運な僕のことだから、今日も雨かと思ってたのに…)
そう考えると、幸治は少しだけ癒された気持ちになれた。
最後の最後に、神様から小さなプレゼントをもらったような気がした。
幸治にとっては中学の時の修学旅行以来の旅行…
人生最後の旅…
(そういえば、あの時は自分だけお土産が買えず悲しかったっけ…)
修学旅行の時のことを思い出しながら、幸治は駅に向かって歩いていた。
駅に通じる道は何通りかある。
ごく自然にいつも通る道を歩くつもりだったが、手前に来てふと気持ちが変わった。
(もう二度とここを歩く事もないんだ。
こんな時くらい、めったに通らない方の道を歩いてみるか…)
ポストには毎日大量の督促状が舞いこみ、携帯にまで頻繁に電話がかかってくる。
きっとこれから先は怖い人達が家にまで来るに違いない。
気持ちがどっと重くなるのを幸治は感じた。
(母さん、僕、もう疲れたよ…)
幸治は、押入れの中から小さな箱を取り出した。
その中に入っているのは、母親の形見のようなもの。
眼鏡や化粧道具、そして薬袋。
袋の中には薬が入っていた。
それは、母親の死後、ティッシュの箱の中からみつかった母親が飲まずに隠していた痛み止めの薬と睡眠薬だった。
幸治の母がなぜそれらを飲まなかったのか、今となってはわからないが、おそらくは薬を飲むと命が縮まるように思ったのではないかと幸治は考えていた。
「今、死ぬわけにはいかない」…それが母親の口癖だったから。
給料日に、幸治は街をうろつき、新しい服と靴と小さ目の旅行鞄を買った。
今まで使っていたものは、どれも擦りきれて酷い有様だったから。
幸治は今の人生を投げ出す事を決めた。
もうそれ以外に、方法はないように思えたのだ。
最後に、幸治の母親がテレビを見ながら行ってみたいと言っていた所を訪ねる事にした。
いつもなら好きなものを買うゆとりなど一銭もない幸治だが、もうこの金は全部使ってしまって良いのだから。
幸治は、母親の写真と薬を忘れずに詰め、旅支度を整えた。
昨日の遅くから振りだした雨も朝にはすっきりとあがっていた。
(不運な僕のことだから、今日も雨かと思ってたのに…)
そう考えると、幸治は少しだけ癒された気持ちになれた。
最後の最後に、神様から小さなプレゼントをもらったような気がした。
幸治にとっては中学の時の修学旅行以来の旅行…
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(そういえば、あの時は自分だけお土産が買えず悲しかったっけ…)
修学旅行の時のことを思い出しながら、幸治は駅に向かって歩いていた。
駅に通じる道は何通りかある。
ごく自然にいつも通る道を歩くつもりだったが、手前に来てふと気持ちが変わった。
(もう二度とここを歩く事もないんだ。
こんな時くらい、めったに通らない方の道を歩いてみるか…)
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