476 / 697
067. 手紙
9
しおりを挟む
(そうだよな…僕がここで死んだら、母さんが頑張った甲斐がないよね…
でも、借金はもうどうしようもない程ある…
僕には返せそうにはない額だよ。
母さん…僕は一体どうしたら良いんだろう…?)
写真に向かって語りかける幸治の瞳からは大粒の涙がこぼれた。
今までずっと我慢していたものがぷつりと切れたような感触と同時に、幸治はその場に突っ伏して声をあげて泣いた。
まるで子供のように、苦しくて息が出来なくなる程、泣いて泣いて泣き尽くした。
そして、幸治はそのままその場で眠り込んでしまった…
*
*
*
雨上がりの空は青く澄み渡ってとても気持ちの良いものだった。
昨日買ったばかりの服を着て、真新しいスニーカーをはいて幸治はいつもの道を駅に向かって歩いて行く。
在来線で大きな駅まで向かい、そこから新幹線に乗り換えた。
新幹線に乗ったのは初めてだったので、幸治は少し弾んだ気分で車窓の景色を眺めていた。
目的の駅に着いて、そこからまた在来線に乗り換えた。
風景がどんどんとのどかなものに変わっていく。
少し眠気を感じながら、幸治は連結の少ない電車に揺られ、湿った風のそよぐ目的の駅に降り立った。
地図を見ながら歩いていくと、すぐに真っ白な砂浜が見えて来た。
夏にはたくさんの海水浴客が押しかけるのだろうなと考えながら、幸治は砂浜を歩く。
今まで海に来たことさえほとんどなかった幸治には、砂浜を歩く感触が珍しく楽しく感じられた。
歩いている途中でふと気付き、旅行鞄の中から母親の写真を取りだし、立ち止まって写真を海の方に向けた。
母親に青い海がよく見えるように…
今夜の宿が、砂浜の先に見えて来た。
足元に小さな白い貝殻をみつけ、幸治はそれをしゃがんで手に取る。
何の貝殻なのかはわからない小さな貝殻…
宿に着いた幸治は、早速、広い温泉に入り、ゆっくりと沈む夕陽を眺めた。
真っ赤な夕陽が、いつまでも残像として幸治の目の奥に焼き付いた。
温泉からあがると、今まで食べたことのないようなご馳走に舌鼓を打った。
めったに飲んだ事のないビールも少し飲んだ。
ほんの少ししか飲んでいないのに、幸治はすぐに眠気に襲われた。
食事を下げてもらうと、幸治は残っていたビールで母親の薬を全部飲んだ。
(母さん、父さん、今、逝くからね…)
幸治の瞳から一粒の涙がこぼれた。
*
*
*
でも、借金はもうどうしようもない程ある…
僕には返せそうにはない額だよ。
母さん…僕は一体どうしたら良いんだろう…?)
写真に向かって語りかける幸治の瞳からは大粒の涙がこぼれた。
今までずっと我慢していたものがぷつりと切れたような感触と同時に、幸治はその場に突っ伏して声をあげて泣いた。
まるで子供のように、苦しくて息が出来なくなる程、泣いて泣いて泣き尽くした。
そして、幸治はそのままその場で眠り込んでしまった…
*
*
*
雨上がりの空は青く澄み渡ってとても気持ちの良いものだった。
昨日買ったばかりの服を着て、真新しいスニーカーをはいて幸治はいつもの道を駅に向かって歩いて行く。
在来線で大きな駅まで向かい、そこから新幹線に乗り換えた。
新幹線に乗ったのは初めてだったので、幸治は少し弾んだ気分で車窓の景色を眺めていた。
目的の駅に着いて、そこからまた在来線に乗り換えた。
風景がどんどんとのどかなものに変わっていく。
少し眠気を感じながら、幸治は連結の少ない電車に揺られ、湿った風のそよぐ目的の駅に降り立った。
地図を見ながら歩いていくと、すぐに真っ白な砂浜が見えて来た。
夏にはたくさんの海水浴客が押しかけるのだろうなと考えながら、幸治は砂浜を歩く。
今まで海に来たことさえほとんどなかった幸治には、砂浜を歩く感触が珍しく楽しく感じられた。
歩いている途中でふと気付き、旅行鞄の中から母親の写真を取りだし、立ち止まって写真を海の方に向けた。
母親に青い海がよく見えるように…
今夜の宿が、砂浜の先に見えて来た。
足元に小さな白い貝殻をみつけ、幸治はそれをしゃがんで手に取る。
何の貝殻なのかはわからない小さな貝殻…
宿に着いた幸治は、早速、広い温泉に入り、ゆっくりと沈む夕陽を眺めた。
真っ赤な夕陽が、いつまでも残像として幸治の目の奥に焼き付いた。
温泉からあがると、今まで食べたことのないようなご馳走に舌鼓を打った。
めったに飲んだ事のないビールも少し飲んだ。
ほんの少ししか飲んでいないのに、幸治はすぐに眠気に襲われた。
食事を下げてもらうと、幸治は残っていたビールで母親の薬を全部飲んだ。
(母さん、父さん、今、逝くからね…)
幸治の瞳から一粒の涙がこぼれた。
*
*
*
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ガチャから始まる錬金ライフ
あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。
手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。
他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。
どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。
自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる