475 / 697
067. 手紙
8
しおりを挟む
小刻みに震える手で幸治は封を切った。
その手紙はいつもより、長いものだった。
「ここはとても寂しくて暗くて寒い。
地獄なんてものはなかったけど、それ以上に辛い所だ。
ここにいる人達は、皆、泣いてるか苦しそうな顔をしてる。
僕もすごく苦しい。
こうやって手紙を書くだけでもものすごく苦しいんだ。
ここに着いた時、ちらっと父さんと母さんの姿を見た。
二人共、僕を見てとても悲しそうに泣いてたよ。
僕も母さん達も必死で手を伸ばそうとしたけど、届かなかった。
僕は、母さん達よりずいぶん下の方に落ちていった。
この便箋と封筒は、その時、父さんが投げてくれたものなんだ。
ここに来てやっと僕は自分のしたことが間違いだったと気が付いた。
楽になりたくてここに来たのに、こっちの方がずっと辛い。
間違いだった。
帰りたいよ。僕は、そこに帰りたい!
そっちの方がずっと楽だもの。
なんで、僕、こんなことをしてしまったんだろう。
母さんが病気になるほど苦労して僕を育ててくれたのに、僕はそれを全部無にしてしまった。
幸せになるようにって、父さんが付けてくれた名前なのに、そうなる前にこんな所に来てしまった。
ここに来て、間違いに気が付くなんて遅すぎるよ。
もう、どうしようもないのに…
便箋もこれで最後だ。
どうか、僕のような間違いはしないでほしい。
ここに来てしまってからじゃ、遅いんだ…」
最後の方は、いつも以上に文字が乱れ、所々が滲んでいた。
(どういうことなんだ…)
幸治は手紙を手に、何度も何度も読み返した。
この文面はどう考えても、自分のことにあてはまる。
母親が病気で亡くなったことも、父親が、幸せになれるようにとの願いを込めて「幸治」と名付けてくれたことも…
内容から考えると、まるで自殺した人間が書いているように思える。
幸治は漠然と霊のことは信じてはいたが、実際に見た事があるわけではない。
それに、今、手許にあるのは現実に存在する手紙だ。
夢でも幻でもない。
(もしかしたら、以前ここに住んでた人が自殺でもしてて、その霊が自分と似た境遇の僕を助けに?)
でも、同じ部屋に住んだだけで、そんなことまでしてくれるものなのだろうか?
いくら考えても幸治にはその答えがわからなかった。
幸治は旅行鞄の中から母親の写真と薬袋を取り出した。
(母さん、ここで逝っちゃだめかな?
やっぱり、あの町に行きたいかい?)
写真の母親はなにも答えない。
不意に手紙のことが思い出され、幸治にはその笑顔が一瞬泣き顔に見えた。
その手紙はいつもより、長いものだった。
「ここはとても寂しくて暗くて寒い。
地獄なんてものはなかったけど、それ以上に辛い所だ。
ここにいる人達は、皆、泣いてるか苦しそうな顔をしてる。
僕もすごく苦しい。
こうやって手紙を書くだけでもものすごく苦しいんだ。
ここに着いた時、ちらっと父さんと母さんの姿を見た。
二人共、僕を見てとても悲しそうに泣いてたよ。
僕も母さん達も必死で手を伸ばそうとしたけど、届かなかった。
僕は、母さん達よりずいぶん下の方に落ちていった。
この便箋と封筒は、その時、父さんが投げてくれたものなんだ。
ここに来てやっと僕は自分のしたことが間違いだったと気が付いた。
楽になりたくてここに来たのに、こっちの方がずっと辛い。
間違いだった。
帰りたいよ。僕は、そこに帰りたい!
そっちの方がずっと楽だもの。
なんで、僕、こんなことをしてしまったんだろう。
母さんが病気になるほど苦労して僕を育ててくれたのに、僕はそれを全部無にしてしまった。
幸せになるようにって、父さんが付けてくれた名前なのに、そうなる前にこんな所に来てしまった。
ここに来て、間違いに気が付くなんて遅すぎるよ。
もう、どうしようもないのに…
便箋もこれで最後だ。
どうか、僕のような間違いはしないでほしい。
ここに来てしまってからじゃ、遅いんだ…」
最後の方は、いつも以上に文字が乱れ、所々が滲んでいた。
(どういうことなんだ…)
幸治は手紙を手に、何度も何度も読み返した。
この文面はどう考えても、自分のことにあてはまる。
母親が病気で亡くなったことも、父親が、幸せになれるようにとの願いを込めて「幸治」と名付けてくれたことも…
内容から考えると、まるで自殺した人間が書いているように思える。
幸治は漠然と霊のことは信じてはいたが、実際に見た事があるわけではない。
それに、今、手許にあるのは現実に存在する手紙だ。
夢でも幻でもない。
(もしかしたら、以前ここに住んでた人が自殺でもしてて、その霊が自分と似た境遇の僕を助けに?)
でも、同じ部屋に住んだだけで、そんなことまでしてくれるものなのだろうか?
いくら考えても幸治にはその答えがわからなかった。
幸治は旅行鞄の中から母親の写真と薬袋を取り出した。
(母さん、ここで逝っちゃだめかな?
やっぱり、あの町に行きたいかい?)
写真の母親はなにも答えない。
不意に手紙のことが思い出され、幸治にはその笑顔が一瞬泣き顔に見えた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―
MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」
「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」
失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。
46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる