Gift

077. 破れた地図

４

その男はどうしても小人の村に行かないといけない理由があるとかで、小人の地図に飛びついたらしいのだが、残念なことに地図を買う金が少し足りなかったそうだ。
店の主人がまた金が貯まってから来てはどうかと言ったが男は聞かず、有り金を全部差し出して、これで買えるだけで良いから売ってほしいと懇願したという。
その金は地図の代金の３分の２相当だったため、老人は考えたあげくに地図の３分の２を破って売ったというのだ。

この爺さんはなんてことを考えてくれるんだ…
そのまま置いといてくれたら、俺が頑張って金を貯めて買うのに…

でも、３分の１でこの値段だったら、全部買うとなると１ヶ月は必死で働かないといけないな。

「そうだ！その男は、その後残りの地図を買いにこなかったのか？」

「ええ、いらっしゃいませんでした。」

おかしな奴だな。
あと３分の１だけならまた金を稼いでから買いに来れば良いのに…
それとも、だいたいの場所はわかるから、そこへ行けばなんとかなると考えたんだろうか？

どっちにしろ、１ヶ月も前の話じゃきっとそいつはここにはもう戻って来ないような気がした。
残りを買いに来そうなら、ここで待ち伏せて協力しないかと持ちかけてみるつもりだったんだけどな。

俺は、この先、役に立つのかどうかわからない地図を手に店を出た。

仕方がない。
今夜はきのこをかじって我慢しよう。
明日、隣町できのこを売れば、なんとか夕食にはありつけるだろう。



俺は、不思議な道具屋をもう一度だけ振り返り、隣町に向かって歩き出した。