Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
567 / 697
080. 優しい悪魔

しおりを挟む




 「やぁ、ロッシュ…」

 奴の仕事が終わるのを待ち、私は町のはずれで彼を待ち伏せた。



 「……あなたは?」

 「少し君と話がしたい。
どうかね、酒場で一杯飲みながら…」

 「僕は酒は飲みませんので、お話なら今ここで伺います。」



 無粋な男だ。
だが、私もどうしても酒が飲みたいわけではなかった。



 「では、単刀直入に言わせていただく。
ロッシュ…君は、今、大変金に困ってるようだが…金が欲しいとは思わんかね?」

 「そりゃあ、思いますが、今はザイラスさんの酒屋で働かせていただいてますから。」

 「君のような華奢な者に、あの仕事は辛いだろう?
しかも、賃金もそう高いとは思えない。
そんな苦しい想いをしなくとも、私は君に欲しいだけの金を与えることが出来る。
それだけじゃない、君の失った名誉も回復してやれる。」

 「……どういうことです?」

ロッシュの瞳には、明らかに疑いと嫌悪の色が浮かんでいた。



 「はっきりと言う。
 私は、悪魔だ。
 君に、金と名誉を与える…その代わり…」

 「魂をくれと言うのですね?」

ロッシュの口調が急に強いものに変わった。



 「……その通りだ。
 悪い取引ではないと思うが…」

 「見損なわないで下さい。
 僕は、どんなに苦しくとも、悪魔に魂を売ったりはしない。」

ロッシュは、踵を返し、歩き去ってしまった。



 「私は町の宿屋にいる。
 気が変わったら、いつでも来てくれ。」

ロッシュは私の言葉に振り向くこともなかった。



 (……面白い。)



さすがに高潔な魂の持ち主だ。
ここまできっぱりと断られるとは思ってもみなかった。
 少しくらい、心が動くかと思ったが、ああも頑なに私を拒むとは…



どこまで強気でいられるか、楽しみだ。
 奴が音を上げ、私の前に跪く日のことを想うと、笑いが止まらなくなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

初めまして婚約者様

まる
恋愛
「まあ!貴方が私の婚約者でしたのね!」 緊迫する場での明るいのんびりとした声。 その言葉を聞いてある一点に非難の視線が集中する。 ○○○○○○○○○○ ※物語の背景はふんわりしています。スルッと読んでいただければ幸いです。 目を止めて読んで下さった方、お気に入り、しおりの登録ありがとう御座いました!少しでも楽しんで読んでいただけたなら幸いです(^人^)

年に一度の旦那様

五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして… しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…

処理中です...