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ルカ(聖夜月ルカ)

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087. あきんど

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「それにしても、ロッシー。
俺、猫族なんて初めてだよ。
そんな種族がいたことさえ今まで知らなかった!」

ケンタロウがそう言った瞬間、ロッシーの表情が強張ったものに変わった。



「わては…わては、猫族なんかやないで!
わては虎族や!!」

「と、虎族……?」

ロッシーはとても怒っているようで、握り締めた拳がわなわなと震えてた。
でも、どう見てもロッシーは虎族なんかには見えない。
虎族といえば、獅子族と並ぶほど体格が良く力も強いエリート的な種族だ。
僕は虎族の子供を見たことも何度もあるけど、子供でも僕より大きな子がたくさんいた。
なのに目の前にいるロッシーは、背丈も僕とほとんど変わらないし、僕よりもさらに華奢な体格をしている。
顔つきも、虎族にしては鼻が小さく、瞳も丸く大きくとても可愛らしいんだ。



「そ、そうだったのか、そいつは悪かったな。」

ケンタロウはその場の雰囲気を取り繕うと思ったのか、精一杯の愛想笑いを浮かべてたけど、ロッシーの機嫌はそんなことでは直りそうになかった。



「……ごめんね、ロッシー。
僕もケンタロウと同じこと考えてたんだ。
本当にごめん。」

僕は、ロッシーに素直に頭を下げた。
なんだか、そうしないと、ケンタロウだけを悪者にするみたいでいやだったんだ。



「……もう、ええ。
いつものことなんや。
わては、誰からもそう見られる…
それも仕方ない事や。
どう見たって、わては虎族には見えへんもんな。
……そんなこと、わても十分わかってるんや……」

独り言みたいにそう呟いたロッシーの顔は、とても悲しそうに見えた。



「ねぇ、もうそんな子と関わるのはお止しなさいよ。
さっさと切り上げて、行くわよ!」

「おまえ……よくそんな薄情なこと言うな!
こいつがこんなにしょげてるって言うのによ!」

ケンタロウの言うことはもっともで、僕もケンタロウと同じ気持ちだった。



「なぁ、ケンタロウ……さっきから誰としゃべってんの?
そこに誰かおんの?」

「あぁ、ここにはフェリーシアっていう馬鹿妖精がいるんだよ!」

「もう!なんでそんなこと言うのよ!!」

「なんでって、いるからいるって言って何が悪いんだ!?」

またいつものケンタロウとフェリーシアの口喧嘩が始まった。



「よ、妖精やて!?
な、なんで、あんたにはそれが見えて、わてには見えへんのや?」

ロッシーの問いかけも耳に入らない程に、ケンタロウはフェリーシアと口喧嘩は白熱したものになっていた。



「なぁなぁなぁ…て!」

ロッシーは無視されてもなおもしつこく食い下がる。



 
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