Gift

ルカ

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087. あきんど

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「ロッシー…ちょっとこっちに…」

見かねた僕はロッシーの袖を引っ張って、二人から引き離した。
ケンタロウとフェリーシアの喧嘩がおさまるまで、僕とロッシーは草原の片隅に腰掛けて待つことにした。
どうせ、しばらくはおさまらないだろうから。
その間に、僕はロッシーといろんな話をした。
彼はその容姿のせいで、幼い頃から同族に馬鹿にされ続けてきたらしい。
なんとかそれをはねのけようと、彼はいろんなことをして頑張ってはみたものの、体格や力の差はどうにもならないものだった。
虎族の集落に人間が行商に来ていたある時、彼は自分が他の虎族と違う才能があることに気がついた。
ロッシーは商人よりもずっと早く計算することが出来たんだ。
自分のことを馬鹿にする虎族を見返してやるために、ロッシーは商人として成功することを夢見て、集落を飛び出して来たそうだ。
ちなみに、ロッシーのおかしな言葉遣いは、ロッシーの集落に行商に来てた商人の真似らしい。



「君も苦労したんだね…」

「わては何も苦労なんかしてへん!
自分がやりたいことをやってるだけや!」

ロッシーのこういう気が強いっていうのか…プライドの高い所は確かに虎族だなと思えた。
僕みたいに拗ねていじけない所が、なんだかとてもかっこ良く見えた。



「とかやん……どないかしたんか?」

「いや……君はすごく前向きだなって思ってね。
……それに君はとっても良い人だよね。」

「良い人?
一体、何のことや?」

「だって…君は僕やケンタロウのことを全然変な目で見なかった…」

「なんや、そんなことか…
とかやん…わては、小さい頃からずっとこの見た目で馬鹿にされて来たんやで。
自分がされていややったことを他のもんにもするほど、わてはあほやないで。
……そうやのうても、わては、最初からあんまり見た目のことは気にならへん性分なんや。
人間も獣人も、結局は中身やろ?」

そう言うと、ロッシーは僕に向かってにっこりと微笑んだ。
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