Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

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090. 一千年

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「ジョッシュ、本当に行くつもりなのか?」

 「当たり前だろ!僕は絶対に、仙人のお宝をみつけてやるんだ!」



 *



 15歳の時、僕は友人のハミエルと一緒に村を出た。
 退屈な田舎の生活に嫌気がさし、二人でこっそり村を出て、憧れの都会に行くことにしたんだ。
 着の身着のまま、たいした路銀もない無謀な旅立ちだった。
でも、僕らの心の中は、大きな期待と希望に満ち溢れ、そんなことは全く気にもならなかった。
 初めての野宿も少しも心細くなんてなかった…雨が降った時と腹ペコ状態には悩まされたけど、それでも、僕らは都会に憧れ、胸をときめかせながら旅を続けた。



 都会に辿り着いた時の感動は今でも忘れられない。
 生まれ育った村とは比べものにならなかった。
そこにうごめく人の数も、立ち並ぶ建物の数も、町の醸し出す活気も…すべてが夢のように感じられた。
 都会にいるというだけで、僕は嬉しくてたまらなかった。



 僕らは仕事をみつけ、一生懸命に働いた。
 時が過ぎ、少しずつ都会に馴染んで行く度に、夢は色褪せていった。
 何かが違う…
あれほど憧れていた都会の町が、いつしかただの冷たいだけの町に思えるようになった。
 僕らは、町はずれの掘っ立て小屋に住み、朝から晩まで辛い肉体労働をしていて…
それでも僕らは最低限の生活しか出来ず、楽しい想いなどなにもなかったのだから。



 「なぁ、ジョッシュ…そろそろ村に帰らないか?」

ハミエルが度々そんなことを口にするようになった。
 僕も実は同じことを考えていたのだけれど、そう言われると不思議と反発心がわき上がった。



 「君はえらく意気地なしだな。僕は帰らないぞ!
 都会で一旗揚げるまでは、絶対に帰らない!」



そんなことで、ハミエルとは度々気まずい想いをした。
 本当は僕だって帰りたかったのに…
懐かしい両親や兄弟の顔が…生まれ育った故郷の風景が脳裏をかすめていたのに、それでも僕は素直になれなかったんだ。



そんなある日のこと…
僕らは、町の酒場で面白い話を耳にした。
トゥローバ山という険しい山に、仙人の宝があるという話だ。
その宝は、とても美しい宝石だとか、魔法の剣だとか、誰も詳しいことは知らないようだった。
そもそも、そんな話はただの噂話だと思っていた。



そう思いながらも、僕はその話にとてもひかれた。
 多分…そこで何もみつけられなかったら、それを言い訳に故郷に戻れる…
そんなことを考えていたのだと思う。



 僕は、ひとりでトゥローバ山に行くことを決意した。

 
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