Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

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090. 一千年

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 (噂以上の山だな……)



トゥローバ山は、本当に険しい山だった。
 山育ちの僕だからこそ登れるが、山に慣れて無い者ならとても登れないだろうと思えた。
 僕は、草をかき分け、道なき道を進み、ひたすら頂上を目指した。
 端から宝なんてあるとは思っていない。
トゥローバ山の頂上まで登ったら、なんとなく気が済むんじゃないかと…
僕はそんなことを思って、山に入ったんだ。



 山に入って十日程が経った頃、ようやく僕は頂上に辿り着いた。
 何とも言えない達成感に、胸が震えた。
 崖の先端に向かい、僕はそこで大声で叫んだ。
 兄弟の名や、いろいろな想いを声に変えた。



 「あっ!」



 高揚し過ぎたのか、僕はあやうく崖の先端から落ちそうになり、咄嗟に木の枝を掴んだ。
その時、崖の壁面に洞窟のような穴があることに僕は気付いた。
 木の枝をしっかりと掴みながら体を反転させ、僕は、穴の中に滑り込んだ。



 (こんなところに洞窟が…)



 僕は好奇心に背中を押されながら、洞窟の中を進んだ。



 「あっ!」



 洞窟は、さほど深くはなかった。
 僕は行き止まりの場所で、小柄な老人に出会った。



 「良くここを見つけたな。」

 老人は、僕に片手を差し出した。



 「え…?」

 「これはおまえのものだ。さぁ飲め。」

 良く見ると、老人の手の平には黒い丸薬のようなものが乗っていた。



 「さぁ、早く!」

 「は、はい。」

わけもわからず、ただ言われた通りに、僕はその丸薬を飲み込んだ。
 何かとても癖のあるにおいが喉の奥に残り、僕は顔をしかめた。



 「あっ!」

その時…僕の目の前で老人の姿が少しずつ薄くなり、煙のように消えて行ったんだ。
その光景に、僕は何も言えず目も離せず…そのうち、急に怖くなってその場から駆け出した。



 「あ、ああーーーっ!」

 僕は、崖下に真っ逆さまに落ちて行った。
 目も眩むような高さだ。
 僕はその時、死を覚悟した。



 *



 「う…うぅ…」

 酷い痛みによって目が覚めた…
僕の体は血だらけで、手は動かせず、足はねじ曲がっていた。



こんな酷いけがをしても生きているとは、僕は運が良いんだと思った。
だけど、痛みは耐え難いものだった。
 僕は痛みにのたうち回りながら、気が付けば十日ほど飲まず食わずで崖下に転がっていた。
それだけではない。折れたはずの手や足もだんだんと痛みがなくなり、そのうち僕は歩けるようになったんだ。

 
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