Gift

096. 極光（オーロラ）

３

灯かりに照らされた女性は私より少し年上だろうか…
落ちついた雰囲気のする色白で華奢な女性だった…

「私も驚きました。
まさか、先客がいらっしゃるとは思ってもみなかったものですから…
あなたは今日ここへ来られたのですか？」

「いいえ…
私はずっと前からです。
なぜ、そのように思われたのかしら？」

「この町に１軒しかない宿に、あなたは泊まってらっしゃらないようでしたので…」

「あぁ…それで…
私はこの町のはずれに住んでるの…」

「そうでしたか…」

私達は並んで空を見上げていた。
冷たく澄みきった空には、たくさんの星達がきらめいている…

女性は時折手に息を吹きかけては両手を擦りあわせていた。

「ここは本当に寒いですね…
あなたはよくこうしてここへ来られてるのですか？」

「ええ…夜になると毎日ここに来るわ。
ここで一晩中、空を眺めてそして夜が明けると家に戻って眠る…
私って、まるで悪霊みたいね…」

自分のことを悪霊等という彼女に、私はかすかな違和感を感じた。

「毎晩ですか？！
なにか特別な理由でも…？」

私のその問いかけに彼女は下を向いて黙ってしまった…

「すみません。
何か、気に障ることでも…」

「…ここでお会いしたのもなにかのご縁かもしれないわ。
私の昔話を聞いて下さるかしら…？
とてもつまらない話なのだけど…」

彼女は、空の星を眺めながら呟くようにそう言った。

「……よろしければ、ぜひ、聞かせて下さい。」