Gift

099. あなたの夢

１

（あぁ、今日もまたずいぶん降ったわね…）



 朝早くに起き、外に出たジルは、そこら中に積もったコインに小さな溜め息を吐いた。
 厳密に言えば、コインとは違う。
どこの国でも使えない、コインのような形の金属片だ。
とても軽く小さいもので、力を入れれば変形させることも出来るが、すぐに元の丸い形に戻る。
 軽いとはいえ、一晩に降る量は多いので、積もったままにしておいたら、屋根が潰れてしまう。
だから、ジルは毎日、コインを屋根から降ろし、道に積もったコインと共に、山にある深い洞窟に運んでいく。
 大変な重労働だ。



 （こんなに降り続いたら、きっと洞窟はコインでいっぱいになってしまうわ。
そうなったら、どこに捨てたら良いのかしら？）



このおかしなコイン降り現象は、数年前から始まった。
しかも、コインが降るのは、ジルの住む町はずれのごく一部の地域に限ってのことだ。
 人々は、悪魔の仕業だとか、神の思し召しだとか勝手なことを話したが、一年もしないうちに誰もがもうコイン降りに関心を示さなくなった。
これが本物のコインならともかく、コインに似た何の役にも立たないものなのだから…