上 下
94 / 201
side 瑠威

しおりを挟む




 「あ、瑠威……
ごはん、食べる?」

やっぱり親子だな。
 望結がかおりと同じことを言った。



 「じゃ、ちょっとだけ…」

 俺が食べないと、きっとかおりも心配するから、一応食べておくことにした。



 「ママの具合はどう?」

 鍋を火にかけながら、望結が訊ねた。



 「うん、本人は大したことないって言ってる。
ま、確かに熱はないんだけどな。」

 「そっか、じゃあ、大丈夫なのかな?
 今は寝てるの?」

 「うん、俺がいると眠れないって追い出された。」

 「そうなんだ…」

 望結はくすっと笑った。



 「……今日のライブはどうだったの?」

 「バッチリ!…と、言いたいとこだけど…」

 「良くなかったの?」

 「いや…かおりが来てなかったから寂しかっただけ。」

 「……はいはい、ご馳走様。」

 望結の呆れ顔に、思わず笑みがこぼれた。



 「なぁ、望結も一回くらい見に来いよ。」

 「や、やだよ。なんか怖いし。」

 「何も怖くないって。
かおりと一緒に来れば心配ないだろ。」

 「あ…あのね…
私の友達の家、喫茶店やってるんだけど…以前クロウさんがよく来てたんだって。
そ、それに、瑠威も一度来たって言ってたよ。」

 「喫茶店?どこの?」

 「えっと…北岡町の……」



 (北岡町…?)



 俺は記憶の糸を手繰り続けた。

 
しおりを挟む

処理中です...