上 下
97 / 201
side 瑠威

しおりを挟む
遅い夕飯を食べ終わり、望結と他愛ない会話を交わしてから、俺は寝室に戻った。
かおりはベッドで本を読んでいた。



 「起きてたのか…早く寝ないとだめじゃないか。」

 「うん…でも、なんだか眠れなくてね…」

そう言ってかおりは本をぱたんと閉じた。



 「おでん、食べた?」

 「うん。サラダとごはんも二杯。」

 「おでんとサラダ?」

 呆れたようなかおりの声…



「望結にはいつも生野菜を食べさせられるんだ。」

 話しながら着替えて、かおりの隣にそっと潜り込む。



 「今日のライブはどうだった?」

 「うん、全力で歌えた。」

 「そう…」

やっぱり、まだ具合が悪いのか、かおりの表情も声もいつもより元気がない。



 「望結…俺のライブの事、何か言ってた?」

 「えっ!?どういうこと?」

かおりが酷く驚いたような顔をしたから、俺の方が戸惑った。



 「どういうって……望結、いくら誘ってもライブに来ないから…
やっぱり俺達みたいなタイプは嫌いなのかなって思って…」

 「あ…あぁ……
たぶん……嫌ってはいないと思う。」

 「そうかな?でも、今日も誘ったけどいやだって言われた。
あ、そういえば、ファンの子からのプレゼントや手紙のこと、何か話した?」

 「えっ?どうして?」

 「うん…手紙は読んでるのかとか聞かれたから…」

かおりは何も言わなかった。
ただ、何かを考えるように遠い目をして黙り込んでいた。

 
しおりを挟む

処理中です...