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ママの想い

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「ママ……」

瑠威を見送って、ママがリビングに戻って来た。



「あの……質問して良い?」

ママは困ったような顔をして私の前に座ると、ほんの小さくだけ頷いた。



「えっと……その……」

いざ話そうと思っても、なかなか言葉が出て来ない。



「わかってる…昨日のことでしょ?」

「うん…
瑠威と別れるって…本当なの?」

ママは、それに対して、なんとも答えなかった。



「望結…話を聞いてくれる?」

「え?う、うん…」

「……実はね……」

それは思いがけない話だった。
ママは瑠威のメジャーデビューが決まったら別れることを最初から決めてたという。
それは、瑠威を無駄なスキャンダルに巻き込まないため。
メジャーデビューの邪魔にならないため…
そのために、あの男性を利用したんだとママは話した。
すべてが私には信じられないような話だった。



「ママ…それほどまでに瑠威のことを…」

ママが可哀想で仕方なかった。
ただ、瑠威より年上だというだけで…私みたいな子供がいるってことで、そんなにも引け目を感じてたなんて…



「決心したつもりだったのに…
どうしても嘘が吐き通せなかった。
瑠威にあんなことをさせてしまったことが、申し訳なくてつい…」

ママはそう言って、溢れだした涙を指で拭った。
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