265 / 506
045 : 盗み聞きの値段
20
しおりを挟む
*
「う、嘘だ!
だ、だって、母さんはだんだん元気になって来てて……
昨日、花のことを楽しみにしてるって笑ったばかりで……」
その報せがあったのは、まだ夜も明けきらない早朝の頃だった。
私達が駆け付けた時には、カトリーヌはすでに事切れており、その傍らに赤い目をしたカールとクロワが立ち尽していた。
「兄さん……ごめんなさい。
僕が付いてたのに…こんなことになって……」
カールが顔を伏せ、か細い声でそう言った。
「カール!どうしたんだ!
なぜこんなことに……」
「テリー…すまない。
突然の発作で……私達にもどうすることも出来なかった……」
「そ、そんな……」
いつも冷静なクロードが、珍しく感情を表に現していた。
その様子から、彼にとっても全く予想外の事態だったのだと私は感じた。
私が予想していたテリー達の幸せな未来は、実現することなく砕け散った。
悲しみに打ちひしがれる彼らの嗚咽を耳にしながら、私にはかける言葉さえみつけられず、ただカトリーヌの冥福を祈る事しか出来なかった。
*
「……いろいろと、どうもありがとうございました。」
カトリーヌの葬儀が済み、慌しく数日の時が流れた。
テリー兄弟は、ようやく落ちつきを取り戻した。
むろん、心の中はまだ整理が出来てないだろうが、二人はこれ以上私達に面倒はかけられない、もう大丈夫だと、子供らしくない気遣いを見せた。
「本当に二人で大丈夫なのか?」
「大丈夫です。
僕も病院の下働きをさせてもらえることになりましたし、これからは兄さんと二人で力を合わせて暮らしていきます。」
「そうか……」
カールは母親の死後、また一段と大人びた雰囲気を感じさせるようになっていた。
「う、嘘だ!
だ、だって、母さんはだんだん元気になって来てて……
昨日、花のことを楽しみにしてるって笑ったばかりで……」
その報せがあったのは、まだ夜も明けきらない早朝の頃だった。
私達が駆け付けた時には、カトリーヌはすでに事切れており、その傍らに赤い目をしたカールとクロワが立ち尽していた。
「兄さん……ごめんなさい。
僕が付いてたのに…こんなことになって……」
カールが顔を伏せ、か細い声でそう言った。
「カール!どうしたんだ!
なぜこんなことに……」
「テリー…すまない。
突然の発作で……私達にもどうすることも出来なかった……」
「そ、そんな……」
いつも冷静なクロードが、珍しく感情を表に現していた。
その様子から、彼にとっても全く予想外の事態だったのだと私は感じた。
私が予想していたテリー達の幸せな未来は、実現することなく砕け散った。
悲しみに打ちひしがれる彼らの嗚咽を耳にしながら、私にはかける言葉さえみつけられず、ただカトリーヌの冥福を祈る事しか出来なかった。
*
「……いろいろと、どうもありがとうございました。」
カトリーヌの葬儀が済み、慌しく数日の時が流れた。
テリー兄弟は、ようやく落ちつきを取り戻した。
むろん、心の中はまだ整理が出来てないだろうが、二人はこれ以上私達に面倒はかけられない、もう大丈夫だと、子供らしくない気遣いを見せた。
「本当に二人で大丈夫なのか?」
「大丈夫です。
僕も病院の下働きをさせてもらえることになりましたし、これからは兄さんと二人で力を合わせて暮らしていきます。」
「そうか……」
カールは母親の死後、また一段と大人びた雰囲気を感じさせるようになっていた。
0
あなたにおすすめの小説
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。
ユウ
ファンタジー
辺境伯爵家の次男シオンは八歳の頃から伯爵令嬢のサンドラと婚約していた。
我儘で少し夢見がちのサンドラは隣国の皇太子殿下に憧れていた。
その為事あるごとに…
「ライルハルト様だったらもっと美しいのに」
「どうして貴方はライルハルト様じゃないの」
隣国の皇太子殿下と比べて罵倒した。
そんな中隣国からライルハルトが留学に来たことで関係は悪化した。
そして社交界では二人が恋仲で悲恋だと噂をされ爪はじきに合うシオンは二人を思って身を引き、騎士団を辞めて国を出ようとするが王命により病弱な第二王女殿下の婚約を望まれる。
生まれつき体が弱く他国に嫁ぐこともできないハズレ姫と呼ばれるリディア王女を献身的に支え続ける中王はシオンを婿養子に望む。
一方サンドラは皇太子殿下に近づくも既に婚約者がいる事に気づき、シオンと復縁を望むのだが…
HOT一位となりました!
皆様ありがとうございます!
【完結】 嘘と後悔、そして愛
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
伯爵令嬢ソニアは15歳。親に勝手に決められて、一度も会ったことのない10歳離れた侯爵リカルドに嫁ぐために辺境の地に一人でやってきた。新婚初夜、ソニアは夫に「夜のお務めが怖いのです」と言って涙をこぼす。その言葉を信じたリカルドは妻の気持ちを尊重し、寝室を別にすることを提案する。しかしソニアのその言葉には「嘘」が隠れていた……
ブラック・スワン ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~
碧
ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる