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048 : 数珠つなぎ
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*
「先生、大丈夫ですか?」
リンゼイは心配そうな顔で、クロードの左手をみつめた。
「たいしたことはありませんよ。
本当はこんな包帯なんていらないのに、クロワさんが大袈裟だから。」
「まぁ、大袈裟なんてこと……
だって、けっこう出血もしてたじゃないですか。」
「あれは爪が割れたからです。
それほどの怪我じゃない。」
リュック達が出掛けた次の日、ガラスが入るまでの間、せめて板でも打ち付けていてはどうかというクロワの提案に挑んだクロードは、釘ではなく自分の指を強かに打ちつけた。
「とにかく……」
クロワが何かを話しかけた時、扉を叩く音が響いた。
「誰かしら?」
「私が見て来ます。」
扉の方を見て浮かない顔をするリンゼイにそう言うと、クロワは立ち上がると同時に玄関に向かった。
「はい。」
「あの……あ、あなたは…!」
「アンディさん…どうして、ここに?」
クロワが扉を開けるなり、向かい合った二人はお互いを驚いたような顔でみつめた。
*
「酷いわ。
私達のことがそんなに信用出来なかったの?」
「そ、そうじゃないって!
あんたらのことは信用してたけど、それでも万一ってことはないとも限らない。
それに、俺、自分の作ったものを他人に預けたことなんて今まで一度もなかったから、なんだか落ち着かなくってな。」
少し大袈裟に怒って見せたクロワの態度に、アンディは焦った様子で言い訳する。
「足の方は痛まなかったんですか?」
「あぁ、治療してもらったおかげであれから痛みがずいぶんひいたし、ここまで来るのもゆっくり時間をかけて来たから、大丈夫だったよ。」
その言葉通り、元気そうな笑みを浮かべたアンディは、今度はリンゼイの母親の方に顔を向けた。
「それで…あの指輪は気に入っていただけたでしょうか?」
「ええ、そりゃあもう……とても、素晴らしい出来だったわ。
ねぇ、リンゼイ…?」
「え…?ええ……」
不意に話しかけられて顔を上げたリンゼイは、アンディの視線を感じてまたそっと俯いた。
「そうか、この人があの指輪の新しい持ち主か……
サイズはあれで良かったかな?」
「え…ええ…ぴったりでした。」
リンゼイは俯いたまま、小さな声で答える。
「私のカンはすごいでしょう?
何年も会ってなくても、あなたのことはなんでもちゃんとわかるのよ。」
「何年も会ってない……って?」
「実はね……」
「母さん!」
「良いじゃないの。」
リンゼイの咎めるような視線にもお構いなしに、彼女の母親はリンゼイと自分の話を始めた。
「先生、大丈夫ですか?」
リンゼイは心配そうな顔で、クロードの左手をみつめた。
「たいしたことはありませんよ。
本当はこんな包帯なんていらないのに、クロワさんが大袈裟だから。」
「まぁ、大袈裟なんてこと……
だって、けっこう出血もしてたじゃないですか。」
「あれは爪が割れたからです。
それほどの怪我じゃない。」
リュック達が出掛けた次の日、ガラスが入るまでの間、せめて板でも打ち付けていてはどうかというクロワの提案に挑んだクロードは、釘ではなく自分の指を強かに打ちつけた。
「とにかく……」
クロワが何かを話しかけた時、扉を叩く音が響いた。
「誰かしら?」
「私が見て来ます。」
扉の方を見て浮かない顔をするリンゼイにそう言うと、クロワは立ち上がると同時に玄関に向かった。
「はい。」
「あの……あ、あなたは…!」
「アンディさん…どうして、ここに?」
クロワが扉を開けるなり、向かい合った二人はお互いを驚いたような顔でみつめた。
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「酷いわ。
私達のことがそんなに信用出来なかったの?」
「そ、そうじゃないって!
あんたらのことは信用してたけど、それでも万一ってことはないとも限らない。
それに、俺、自分の作ったものを他人に預けたことなんて今まで一度もなかったから、なんだか落ち着かなくってな。」
少し大袈裟に怒って見せたクロワの態度に、アンディは焦った様子で言い訳する。
「足の方は痛まなかったんですか?」
「あぁ、治療してもらったおかげであれから痛みがずいぶんひいたし、ここまで来るのもゆっくり時間をかけて来たから、大丈夫だったよ。」
その言葉通り、元気そうな笑みを浮かべたアンディは、今度はリンゼイの母親の方に顔を向けた。
「それで…あの指輪は気に入っていただけたでしょうか?」
「ええ、そりゃあもう……とても、素晴らしい出来だったわ。
ねぇ、リンゼイ…?」
「え…?ええ……」
不意に話しかけられて顔を上げたリンゼイは、アンディの視線を感じてまたそっと俯いた。
「そうか、この人があの指輪の新しい持ち主か……
サイズはあれで良かったかな?」
「え…ええ…ぴったりでした。」
リンゼイは俯いたまま、小さな声で答える。
「私のカンはすごいでしょう?
何年も会ってなくても、あなたのことはなんでもちゃんとわかるのよ。」
「何年も会ってない……って?」
「実はね……」
「母さん!」
「良いじゃないの。」
リンゼイの咎めるような視線にもお構いなしに、彼女の母親はリンゼイと自分の話を始めた。
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