342 / 506
060 : 手繰りよせたなら
7
しおりを挟む
「だけど、エヴァ……
あんた、故郷が嫌いだったんじゃないのか?」
「そりゃあ、確かに若い時は嫌いだったよ。
あんな何の刺激のない田舎の村…大嫌いだった。
……だけどね…あいつと別れて必死になって働いてた時……
思い出すのは村のことばかりだったんだ。
何度帰りたいと思ったか知れないよ。
だけど、帰れなかった…一生、帰れるはずがないと諦めてた。
自分がしでかしたこと考えたら当然だよね……
でも……あんた達が帰れるチャンスを作ってくれた。」
話すエヴァの隣で、リータはゆっくりと頷いた。
「昨夜、この子とずっと話しあったの。
離れてからの出来事を、この子は全部話してくれた。
……仲の良かった昔に戻れたような気がしたわ。
そして、どうしてもっと真剣に捜さなかったのか後悔したわ。
もっと早くにみつけていたら、この子もこんなに苦労することはなかったのに……」
そう言いながらリータは口許を押さえて俯いた。
「何言ってんだよ。
悪いのは私なんだから……
自業自得ってやつさ。」
「でも……」
「おばさんは一生懸命捜したじゃないか。
そのせいで、身体まで壊して……」
「サイモン……
母さんに良くしてくれたらしいね。
ありがとうよ。」
「俺は別に何も……」
謙遜したサイモンは、静かに首を振る。
まさか、たった一夜にして、エヴァの気持ちがこれほど変わるとは思ってはいなかったが、きっとそれは彼女にとってもディヴィッドにとっても良いことなのだろう。
その証拠に、エヴァはとても満ち足りた瞳をしていた。
(今回も、リュックの想いが叶ったな……)
「あんたは昔からそうだった。
困ってる人がいたら放っておけなくて……
そして、誉められるのが苦手で……」
「そ、そんなこと……」
サイモンはさらに深く頭を垂れた。
「今回の旅行で、ディヴィッドがすごく変わったことも決心に繋がったんだ。
あの子…すごく明るくなった。
よく笑うし、よく話すようになって……ついさっきまでおしゃべりしてたんだけど、疲れたらしく今は眠ってるんだ。
十日やそこらの旅行で、あの子があんなに変わったこともショックだった。
あの子…人見知りで、大人の顔色ばかりみておどおどして…ちょっとへんてこな子だっただろう?
そうなったのがあたしのせいだったんだってこと…やっと気付いたんだ。」
エヴァは、そう言って悔やしそうに唇を噛み締めた。
あんた、故郷が嫌いだったんじゃないのか?」
「そりゃあ、確かに若い時は嫌いだったよ。
あんな何の刺激のない田舎の村…大嫌いだった。
……だけどね…あいつと別れて必死になって働いてた時……
思い出すのは村のことばかりだったんだ。
何度帰りたいと思ったか知れないよ。
だけど、帰れなかった…一生、帰れるはずがないと諦めてた。
自分がしでかしたこと考えたら当然だよね……
でも……あんた達が帰れるチャンスを作ってくれた。」
話すエヴァの隣で、リータはゆっくりと頷いた。
「昨夜、この子とずっと話しあったの。
離れてからの出来事を、この子は全部話してくれた。
……仲の良かった昔に戻れたような気がしたわ。
そして、どうしてもっと真剣に捜さなかったのか後悔したわ。
もっと早くにみつけていたら、この子もこんなに苦労することはなかったのに……」
そう言いながらリータは口許を押さえて俯いた。
「何言ってんだよ。
悪いのは私なんだから……
自業自得ってやつさ。」
「でも……」
「おばさんは一生懸命捜したじゃないか。
そのせいで、身体まで壊して……」
「サイモン……
母さんに良くしてくれたらしいね。
ありがとうよ。」
「俺は別に何も……」
謙遜したサイモンは、静かに首を振る。
まさか、たった一夜にして、エヴァの気持ちがこれほど変わるとは思ってはいなかったが、きっとそれは彼女にとってもディヴィッドにとっても良いことなのだろう。
その証拠に、エヴァはとても満ち足りた瞳をしていた。
(今回も、リュックの想いが叶ったな……)
「あんたは昔からそうだった。
困ってる人がいたら放っておけなくて……
そして、誉められるのが苦手で……」
「そ、そんなこと……」
サイモンはさらに深く頭を垂れた。
「今回の旅行で、ディヴィッドがすごく変わったことも決心に繋がったんだ。
あの子…すごく明るくなった。
よく笑うし、よく話すようになって……ついさっきまでおしゃべりしてたんだけど、疲れたらしく今は眠ってるんだ。
十日やそこらの旅行で、あの子があんなに変わったこともショックだった。
あの子…人見知りで、大人の顔色ばかりみておどおどして…ちょっとへんてこな子だっただろう?
そうなったのがあたしのせいだったんだってこと…やっと気付いたんだ。」
エヴァは、そう言って悔やしそうに唇を噛み締めた。
0
あなたにおすすめの小説
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
【完結】 嘘と後悔、そして愛
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
伯爵令嬢ソニアは15歳。親に勝手に決められて、一度も会ったことのない10歳離れた侯爵リカルドに嫁ぐために辺境の地に一人でやってきた。新婚初夜、ソニアは夫に「夜のお務めが怖いのです」と言って涙をこぼす。その言葉を信じたリカルドは妻の気持ちを尊重し、寝室を別にすることを提案する。しかしソニアのその言葉には「嘘」が隠れていた……
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。
ユウ
ファンタジー
辺境伯爵家の次男シオンは八歳の頃から伯爵令嬢のサンドラと婚約していた。
我儘で少し夢見がちのサンドラは隣国の皇太子殿下に憧れていた。
その為事あるごとに…
「ライルハルト様だったらもっと美しいのに」
「どうして貴方はライルハルト様じゃないの」
隣国の皇太子殿下と比べて罵倒した。
そんな中隣国からライルハルトが留学に来たことで関係は悪化した。
そして社交界では二人が恋仲で悲恋だと噂をされ爪はじきに合うシオンは二人を思って身を引き、騎士団を辞めて国を出ようとするが王命により病弱な第二王女殿下の婚約を望まれる。
生まれつき体が弱く他国に嫁ぐこともできないハズレ姫と呼ばれるリディア王女を献身的に支え続ける中王はシオンを婿養子に望む。
一方サンドラは皇太子殿下に近づくも既に婚約者がいる事に気づき、シオンと復縁を望むのだが…
HOT一位となりました!
皆様ありがとうございます!
【完結】瑠璃色の薬草師
シマセイ
恋愛
瑠璃色の瞳を持つ公爵夫人アリアドネは、信じていた夫と親友の裏切りによって全てを奪われ、雨の夜に屋敷を追放される。
絶望の淵で彼女が見出したのは、忘れかけていた薬草への深い知識と、薬師としての秘めたる才能だった。
持ち前の気丈さと聡明さで困難を乗り越え、新たな街で薬草師として人々の信頼を得ていくアリアドネ。
しかし、胸に刻まれた裏切りの傷と復讐の誓いは消えない。
これは、偽りの愛に裁きを下し、真実の幸福と自らの手で築き上げる未来を掴むため、一人の女性が力強く再生していく物語。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる