51 / 121
手帳
1
しおりを挟む
(もう~っ!私ってどんだけ物持ちが良いのよ!)
納戸から出てくるガラクタに、私は思わずヒステリーを起こしそうだった。
友人の影響で断捨離を始めて約半年。
今までなかなかものが捨てられなかった私が、暇さえあれば少しずつ片付けをするようになった。すごい進歩だ。
今日は、後回しにしていた納戸についに手を付けた。
中にはもう成人した子供達のおもちゃや、カビてパリパリになった古い靴、雑誌の切り抜き等々明らかにもういらないものが山のようにあった。
(あれ?)
ガラクタを手当り次第にゴミ袋に放り込んでいく間に、見慣れたものを発見した。
私の若い頃のバッグだ。
ほこりをかぶったそれを手に取る。
中には化粧品やハンカチ、そしてキャラクターの手帳が入っていた。
私は手帳のページをめくる。
(懐かしい…)
今よりも少し丸っこい私の文字。
その日の予定がびっしりと書き込まれていた。
まだ結婚前のものだ。
『6:30 噴水前 R子』
『R子』というのがよく書かれている。
今ではすっかり疎遠になってしまったけれど、当時、仲の良かった礼子のことだ。
私は用心深かったのか、皆の名前をイニシャルで記していた。
もう20年以上前のことなのに、それが誰のことかすぐにわかる。
友人や彼氏、職場の人…忘れかけてたけど、家族のことまでイニシャルで書いていた。
(……ん?)
11月になって、『N』というのが出てきた。
最後まで読むと、『N』は結局、3回程出て来た。
だけど、どうしたことかそれが誰のことかわからない。
他は全員分かったのに、『N』だけがどうしてもわからない。
「あ、いけない!」
手帳に気を取られているうちに、いつの間にか夕方になっていた。
私は慌ててあたりを片付け、夕食の準備に取り掛かった。
*
(誰なんだろう?)
その晩も、また次の日も、そのまた次の日も『N』のことが気になって仕方なかった。
だけど、20年以上も前のこと、誰が覚えているというのだろう?
私はあまり友達や知り合いのことを家族にも話さなかった。
礼子なら知ってるかもしれないけれど、今は礼子の連絡先さえわからない。
悶々とした気分で日々を過ごし、いつの間にか私は『N』のことを忘れていった。
納戸から出てくるガラクタに、私は思わずヒステリーを起こしそうだった。
友人の影響で断捨離を始めて約半年。
今までなかなかものが捨てられなかった私が、暇さえあれば少しずつ片付けをするようになった。すごい進歩だ。
今日は、後回しにしていた納戸についに手を付けた。
中にはもう成人した子供達のおもちゃや、カビてパリパリになった古い靴、雑誌の切り抜き等々明らかにもういらないものが山のようにあった。
(あれ?)
ガラクタを手当り次第にゴミ袋に放り込んでいく間に、見慣れたものを発見した。
私の若い頃のバッグだ。
ほこりをかぶったそれを手に取る。
中には化粧品やハンカチ、そしてキャラクターの手帳が入っていた。
私は手帳のページをめくる。
(懐かしい…)
今よりも少し丸っこい私の文字。
その日の予定がびっしりと書き込まれていた。
まだ結婚前のものだ。
『6:30 噴水前 R子』
『R子』というのがよく書かれている。
今ではすっかり疎遠になってしまったけれど、当時、仲の良かった礼子のことだ。
私は用心深かったのか、皆の名前をイニシャルで記していた。
もう20年以上前のことなのに、それが誰のことかすぐにわかる。
友人や彼氏、職場の人…忘れかけてたけど、家族のことまでイニシャルで書いていた。
(……ん?)
11月になって、『N』というのが出てきた。
最後まで読むと、『N』は結局、3回程出て来た。
だけど、どうしたことかそれが誰のことかわからない。
他は全員分かったのに、『N』だけがどうしてもわからない。
「あ、いけない!」
手帳に気を取られているうちに、いつの間にか夕方になっていた。
私は慌ててあたりを片付け、夕食の準備に取り掛かった。
*
(誰なんだろう?)
その晩も、また次の日も、そのまた次の日も『N』のことが気になって仕方なかった。
だけど、20年以上も前のこと、誰が覚えているというのだろう?
私はあまり友達や知り合いのことを家族にも話さなかった。
礼子なら知ってるかもしれないけれど、今は礼子の連絡先さえわからない。
悶々とした気分で日々を過ごし、いつの間にか私は『N』のことを忘れていった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる