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dark ver.
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「もしかしたら、人間は心が痛くなると痛いのを止めようと思って生きるのをやめたくなるんですか?」
「…そうかもしれないね…
でも、そんなことしたら、今度はまわりの人達の心が痛くなるよね…」
「あぁ、だから、そんなことをしちゃ駄目なんですね?」
「それはおかしいわ。
私がここを切った時は、誰も心が痛くなってなかったみたいだもの。
皆、驚いてたけど、それだけだったわ。
私は痛くて血がいっぱい出てるのに怒鳴られたわよ。」
「それはそれが君の身体じゃないからじゃないかい?」
「そんなこと、誰も知らないのよ。
だから違うと思うわ。」
「そっか…じゃ、何が違うんですか?」
ビセンテは、無邪気な瞳をカミーユの方に向けた。
「だから、それは……」
「簡単に答えられる質問じゃないわね…
私自身もまだわかってないの。
私も、ルネが私の身体を返してくれそうにないと感じてからは、死のうと思ったんだもの…」
答えに詰まるカミーユの代わりに、クロエが話した。
「でも、お人形は自分では死ねないわ…」
「…そうね…
それはよくわかったわ。
却ってその方が良いのかもしれないわね…」
「…この問題はすぐには答えが出そうにないね…
…それで…女の子が亡くなってからどうなったんだい?」
「……その晩、遅くなってから女の子の部屋に男の人が入ってきました。
女の子と双子のあの人です。
男の人は僕とルネを長椅子に並べて座らせ、『君を一人では逝かせないよ…』と言って、女の子のすぐそばで横になりました。
そして、次の日の朝…お父さんとお母さんとおばあちゃんはまたとても驚いたような様子で、そして皆とても悲しそうに泣いていました。」
「…男の子も動かなくなったんだね…」
「そうです…男の子も自分で死んだ…んですね…?
それから何日かしてお父さんは僕達をお店に売りました。
男の子と女の子はいなくなったけど、僕達はやっと一緒にいられると思ったのに売られてしまったのです…」
「そして、私達は別々の人に買われ、そして飽きられると別の人の所にやられたり、また売られたりしたわ…
皆、可愛がってくれるのはほんの一時だけ…
子供は特にそうだった…」
ルネは、悔しそうにそう言って唇を噛みしめた。
「僕も似たようなものでした。
だけど、ある日優しい女の人に買われ、それからはその人がずっと可愛がってくれました。
だけど、その人はだんだんおばあさんになって動かなくなって…そして…」
「その人も自分で死んじゃったの?」
「よくわからないけど、だんだん動かなくなってきて…よく家でも寝てるようになって…」
「じゃ、きっとその人は自然に亡くなったのね…
きっとずいぶんお年寄りだったんじゃないかしら?」
「僕には人間の年はよくわかりません。
でも、その人は僕のことをとても大切にして可愛がってくれましたよ。
いろんな話をしてくれて、洋服も作ってくれました。」
「…そうかもしれないね…
でも、そんなことしたら、今度はまわりの人達の心が痛くなるよね…」
「あぁ、だから、そんなことをしちゃ駄目なんですね?」
「それはおかしいわ。
私がここを切った時は、誰も心が痛くなってなかったみたいだもの。
皆、驚いてたけど、それだけだったわ。
私は痛くて血がいっぱい出てるのに怒鳴られたわよ。」
「それはそれが君の身体じゃないからじゃないかい?」
「そんなこと、誰も知らないのよ。
だから違うと思うわ。」
「そっか…じゃ、何が違うんですか?」
ビセンテは、無邪気な瞳をカミーユの方に向けた。
「だから、それは……」
「簡単に答えられる質問じゃないわね…
私自身もまだわかってないの。
私も、ルネが私の身体を返してくれそうにないと感じてからは、死のうと思ったんだもの…」
答えに詰まるカミーユの代わりに、クロエが話した。
「でも、お人形は自分では死ねないわ…」
「…そうね…
それはよくわかったわ。
却ってその方が良いのかもしれないわね…」
「…この問題はすぐには答えが出そうにないね…
…それで…女の子が亡くなってからどうなったんだい?」
「……その晩、遅くなってから女の子の部屋に男の人が入ってきました。
女の子と双子のあの人です。
男の人は僕とルネを長椅子に並べて座らせ、『君を一人では逝かせないよ…』と言って、女の子のすぐそばで横になりました。
そして、次の日の朝…お父さんとお母さんとおばあちゃんはまたとても驚いたような様子で、そして皆とても悲しそうに泣いていました。」
「…男の子も動かなくなったんだね…」
「そうです…男の子も自分で死んだ…んですね…?
それから何日かしてお父さんは僕達をお店に売りました。
男の子と女の子はいなくなったけど、僕達はやっと一緒にいられると思ったのに売られてしまったのです…」
「そして、私達は別々の人に買われ、そして飽きられると別の人の所にやられたり、また売られたりしたわ…
皆、可愛がってくれるのはほんの一時だけ…
子供は特にそうだった…」
ルネは、悔しそうにそう言って唇を噛みしめた。
「僕も似たようなものでした。
だけど、ある日優しい女の人に買われ、それからはその人がずっと可愛がってくれました。
だけど、その人はだんだんおばあさんになって動かなくなって…そして…」
「その人も自分で死んじゃったの?」
「よくわからないけど、だんだん動かなくなってきて…よく家でも寝てるようになって…」
「じゃ、きっとその人は自然に亡くなったのね…
きっとずいぶんお年寄りだったんじゃないかしら?」
「僕には人間の年はよくわかりません。
でも、その人は僕のことをとても大切にして可愛がってくれましたよ。
いろんな話をしてくれて、洋服も作ってくれました。」
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