タイトル未定

8：ロングソード

４

「あらまぁ、良い男！
思った通り…いや、思った以上だよ。」

女主人はディヴィッドの顔を見てうっとりとした表情でそう言った。



「俺が働くのはレストランなんだろ？
なんで床屋まで…」

「いいから、いいから。
さ、店に戻るよ！」

女主人は、ディヴィッドの手を引いて足早に店へと戻って行く。



＊



「あんたなら、このサイズで良いと思うよ。」

連れて行かれた奥の部屋で、女主人がディヴィッドに差し出したのは、ウェイターというよりは執事のような服だった。



「これを着るのか？」

「そうよ。
それとね、うちは高級な店なんだから、言葉遣いには気を付けること！
『俺』じゃなくて『私』
見習のうちは、お客を席に案内する仕事をやってもらおうか。
あ、レオナルド！」

「はい、マダム、なんでしょうか？」

「今日から働くディヴィッドだよ。
面倒みてやっておくれ。
あ、ディヴィッド、あんた家はあるのかい？」

「いや、ない。」

「じゃあ、レオ、家のことも頼むよ。」

「わかりました。マダム。」

女主人は、ディヴィッドのことをレオナルドに預けると、忙しそうにしてどこかへ走って行った。



「あんた、名前は？」

「俺はディヴィッドだ。」

「じゃあ、まず、家に案内しよう。
荷物はそれだけか？」

ディヴィッドは頷いた。



ディヴィッドが案内されたのは、店からすぐ傍の宿屋だった。
以前は宿屋だったらしいのだが、そこが潰れてからあの店の従業員の寮として使われているらしい。




「じゃあ、あんたの部屋はここだ。
鍵を渡しとくよ。
それと、仕事のことなんだが…」

レオナルドは、ディヴィッドに仕事の手順を丁寧に教えた。
手順と言っても、入口から客を席に案内するだけらしいのだが、中には数人、特に丁寧に扱わねばならない客がいるとのことだった。
それと、女主人にも言われたことだが、言葉遣いに気を付ける事を念押しされた。



「そんなに格式の高いレストランなのか…
俺、やっていけるかな…」

「『俺』じゃない『私』だ。
あんたは、その外見のお陰でうちの店に入れたんだから頑張れよ！
うちはとにかく給料は良いからな。」

「外見の…？どういうことなんだ？」

「今更何言ってるんだ？
うちがセレブ御用達のイケ面レストランってこと位知ってるんだろう？」

「イ…イケ面レストラン？
そんな所に俺が？！」

ディヴィッドは、レオナルドの言うことが信じられない想いだった。