お題小説

023 ： 華燭の典

８

三人の降らせるフラワーシャワーに包まれたマリアンヌはまるで花の妖精のように美しく、そしてとても幸せそうだった…



「ありがとう…みんな…」

マリアンヌの瞳に一粒の涙が光った。



 驚き続きの結婚式は無事終わった…



「おいおい、マルタン！一体何がどうなってるんだ？！」

「騙してすみません、ゴーチェさん。
こうでもしないとあいつはなかなか自分の気持ちに正直になれないと思ったんで…」

「何？
すると、マルタンがマリアンヌと結婚したいって言ったのは最初から芝居だったのか？
クロワさんもこのことを知ってたのか？」

 「いいえ。私も昨日聞かされたばかりでとても驚きました。」

マリアンヌの車椅子を押しながら、イシドールが部屋に入って来た。



「マルタンさん、俺の頼みを聞いてくれて本当にありがとう！！
感謝してるぜ。
でも、まさか結婚式までしてしまうことになるとはな。
 全く驚いたぜ！
でも、もうこれで思い残すことはない！さぁ、すっぱりやってくれ！」

「すっぱりって何なんだ？！」

「あ、その前に…」

イシドールはマリアンヌの身体を強く抱き締めた。



「何？どうしたの？イシドール？！」

「もうこれからはこんなことも出来ないからな…
さ！マルタンさん！やってくれ！！」

目を堅く閉じ、口元をきゅっと結んだイシドールに私は思わず吹き出してしまった。



「君の腕なんてもらっても、使い道がないよ。」

「え！…どういうことだ！？」

「実はな…」

マルタンは今回の計画のすべてを話して聞かせた。



「そ、そんなぁ…」

「なにが、『そんな…』だ！
こんなに手間かけさせておいて！」

「マルタンさんには最初から何もかもわかってたのね…」

「あぁ、そしてこのままじゃイシドールも君も意地を張って本心を言わないだろうということもね。」

「私もすっかり騙されてました。
マルタンさんは本当にマリアンヌさんのことがお好きなんだと…
昨日まで本当にご結婚されるんだと思ってました。」

「良かったじゃないか、クロワさん！
ほっとしただろ！」

「どういう意味よ、イシドール！！」

「いや…なんでも…」