お題小説

075 ： 嘘と約束 白いネコ

２

「あぁ、何かの化石の発掘をしてるって女の人だな。
その人なら泊まってるよ。
毎日、朝早くに出て暗くなったら戻って来るんだ。
いつも泥だらけになってな。
そろそろ、帰って……あ！噂をすればなんとやらってやつだ。」

宿の主人が指差す先に、服を泥まみれにしたクロワが立っていた。



「マルタンさん！」

「クロワさん、やはりここだったんですね。
会えて良かった。」

「ずいぶん遅かったんですね。
それで、リュックは…？」

「詳しい話はあとで…実は、あなたに診てもらいたい人がいるんです。」

「私に…？
ちょっと待ってて下さい。
すぐに服を着替えてきます。」

しばらくして身支度を整えたクロワを伴ない、私達は診療所へ向かった。



「クロワさんじゃないか！！
こいつは驚いた。
マルタン、あんたのカンはすごいもんだな！」

「そんなことより、ユベールはどうなんだ？」

「それなんだが、さっきやっと意識が戻ったんだ。
一応、危険な状態は乗り越えただろうって話だったぜ。」

「……そうか、良かった…
それで、二人はどこなんだ？」

「こっちだ…」

案内された薄暗い部屋に、小さなユベールが死人のように静かに横たわっていた。



「オデットさん、大丈夫ですか？」

「マルタンさん…おかげさまで、なんとか…」

「実は、この前から言っていた私の知り合いを連れて来たのですが…」

「それはどうも…ですが、今、ユベールは眠ってますし…ここでいただいたお薬も飲ませましたから…」

「……そうですか。
そういえば、旦那さんに連絡しないといけないのではありませんか？
あなたはここを動けないでしょうから、私達が探してきましょう。」

「良いのですか？！
それは助かります。」

「ご主人のお名前と特徴を教えて下さい。」

「主人の名はフランクと言います。
黒髪で背が高く、右頬にほくろがあります。」

「もしかしたら…」

クロワが小さな声で呟いた。



「なんだ、クロワさん…もしかしてその人のことを知ってるのか？」

「え…ええ…宝石を掘りに来たとおっしゃってる方が、お名前はお聞きしてないんですが、そういう雰囲気の方で…」

「きっと、その人です！」

「あんたの旦那は宝石を掘ってるのか…」

「え…ええ…この子の薬代やらなにやらでお金がかかるので…」

「なるほど…宝石なら一つでもみつかりゃあ儲けが大きいもんな！」

「え、ええ…そうなんです…」