お題小説

075 ： 嘘と約束 白いネコ

８

「俺もびっくりしたよ。
なんでも、身体が弱い上に貧しくて栄養のあるものをあまり食べさせられなかったせいで発育が遅れてるんだって、オデットさんは言ってたがな。」

「そうか、それじゃあ、栄養のあるものを食べさせれば少しは元気になれるのか？」

「ところが、まるで食欲ってもんがなくてな…
水みたいなスープを一口二口すすっただけで、もう食べないんだ。
いや、食べられないんだろうな、きっと…」

リュックは寂しそうな顔でそう言った。



「そうか…クロワさんにそう言って、食欲の出る薬でも作ってもらおうか。」

「そうだな。
とにかく、食べなきゃ弱る一方だからな。」

「そういえば、オデットさんはずいぶん回復して来たようだな。」

「そうなんだ。
以前、ユベールに血を分けた時は、オデットさん自身も具合が悪くなってしばらく入院したらしいんだ。
でも、今回は大丈夫だったって。」

「じゃあ、ユベールが血を吐いたのは、今回が初めてじゃないってことだな。」

「そうか！…そういうことになるな。
血を吐くなんて、やっぱり、なんか心配だな…」

しばらくするとクロワが戻って来たが、明日のために何か作ると言って厨房の方へ行ってしまい、私はそのまま眠ってしまっていた。



次の日、いつものように私達は三人で診療所へ行き、リュックを残して私とクロワは採掘現場へ向かった。
フランクはすでに作業に取り組んでいた。
クロワはフランクに差し入れを持っていき、私は昨日掘っていた場所に向かい、作業を再開した。

そんな日が一週間程続いたが、相変わらず、なにも見つける事は出来なかった。
フランクもやはり同じような状況のようだ。



「クロワさん…やはり、ここには陽炎の化石なんてものは…」

「マルタンさん、そんなことを言うのはやめて下さい！！
もしも…もしもこの場所に陽炎の化石がないのなら…
私はどうすれば良いんです？！
他にジャクリーヌのためにしてあげられることが、なにかあるんでしょうか？！
前に、マルタンさんもおっしゃったじゃないですか。
どんなに小さな希望でもそれがあるうちはそこに向かって歩いていけるって…
もうないと諦めてしまったら…私はこの先、どこに向かえば良いのか…」

いつも冷静なクロワが、涙を流していた。