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side 慎太郎

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「あの~……」

「なんじゃな?
腹でもすいたのか?」

「いえ…そうではなくて……
その……俺がどうしてここにいるかを知りたいっていうか……」

老人は、俺を違う部屋に案内して、そこでお茶とお菓子でもてなしてくれた。
ハーブティーなのかなんなのかはわからなかったけど、俺が今まで飲んだ事のないちょっと変わった味のお茶で、お菓子も甘いのは甘いんだけど、やっぱり今までには食べたことのない味だった。



「あの壷はここに繋がっているらしいから、そのせいじゃろうなぁ……」

「はぁ、なるほど……って、そうじゃなくて!
壷からここに繋がってるって、どういうことなんです!?」

「どういうって……
なんでも、先祖が陰陽師だか祈祷師に術をかけさせたとかなんとか……
うん、そうじゃ…確かそういう話じゃったような……気がする……」

老人は腕を組み、瞼を閉じてゆっくりと頷いた。



「陰陽師って一体いつの時代の話なんですか!
それに術をかけさせたって一体どういう……」

「わしも詳しいことは知らん。
なにせ、昔のことじゃからな。
ただ、あの部屋…さっき、おぬしがおった部屋じゃが、あそこと壷は明らかに繋がっており、以前にも一度他所の世界からの人間が迷いこんだという話が残っておる。」

「……他所の世界……?
ま、まさか……」

まさかまさか……ここが異世界だとでも言うのか?
あの壷とこことは繋がっていて、俺は異世界に飛ばされたって……



「だ、だけど、おじいさんは俺の言葉が通じてるじゃないですか!
この家の構造もこのお茶やお菓子も、俺のいた世界にあるものとそう変わらない。」

「そんなことは、わしは知らん。
そもそも、異世界だったら言葉が通じんとか、習慣や文化が全然違うという決まりでもあるのか?」

「そ、それは……」

俺だってそんなこと知るもんか!
でも、こんな微妙な違いで異世界って言われてもピンと来ない。
とはいえ、驚く程激しく違って、言葉も全く通じなかったら、今ほど冷静ではいられなかったかもしれないけど……
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