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(美戎……)
薄暗い部屋の片隅で膝を抱えて、ぼんやりとした視線をテレビの方に泳がせて……
だけど、騒がしい映像や音は、美戎の耳を素通りしている。
しばらくは、あいつの好きなようにさせてやろう…
皆で話しあって、そうすることにしたものの…
やっぱり、心配で、俺は毎日ここへ来る。
「美戎……腹減っただろ?
かつ丼弁当、買って来たぞ。」
俺がそう言うと、美戎はゆっくりと無表情な顔を俺の方に向けて……
「一緒に食べような。」
俺は、美戎の傍に腰を降ろし、弁当を広げた。
「いやぁ、おいしそう。
今日はかつ丼弁当でっか…」
絶妙のタイミングで、小餅婆さんがお茶を運んできた。
いつものことだから、小餅婆さんの分も弁当は買ってある。
「じゃあ、食べましょうか。」
美戎は、何も言わず…でも、口だけはちゃんと動かして、弁当を食べている。
とりあえず、食べてくれるのはありがたい。
食べる量も以前とほとんど変わっていない。
「もうそろそろ桜の季節だな。
な、美戎…桜が咲いたら、花見に行かないか?
弁当持って…」
美戎は俺の話に何も答えない。
ただ、黙って弁当をかきこむだけだ。
それでも、俺は一方的に話を続ける。
ごく他愛ない話だけど…少しでもあいつの気晴らしになればと思って……
「あ、そうだ…今日、お店の人に会ったんだ。
えっと、確か、純平君とか言ったかな?
おまえのこと、心配してたぞ。」
美戎は、相変わらず何も答えないまま、二つ目の弁当を開けていた。
(美戎……)
薄暗い部屋の片隅で膝を抱えて、ぼんやりとした視線をテレビの方に泳がせて……
だけど、騒がしい映像や音は、美戎の耳を素通りしている。
しばらくは、あいつの好きなようにさせてやろう…
皆で話しあって、そうすることにしたものの…
やっぱり、心配で、俺は毎日ここへ来る。
「美戎……腹減っただろ?
かつ丼弁当、買って来たぞ。」
俺がそう言うと、美戎はゆっくりと無表情な顔を俺の方に向けて……
「一緒に食べような。」
俺は、美戎の傍に腰を降ろし、弁当を広げた。
「いやぁ、おいしそう。
今日はかつ丼弁当でっか…」
絶妙のタイミングで、小餅婆さんがお茶を運んできた。
いつものことだから、小餅婆さんの分も弁当は買ってある。
「じゃあ、食べましょうか。」
美戎は、何も言わず…でも、口だけはちゃんと動かして、弁当を食べている。
とりあえず、食べてくれるのはありがたい。
食べる量も以前とほとんど変わっていない。
「もうそろそろ桜の季節だな。
な、美戎…桜が咲いたら、花見に行かないか?
弁当持って…」
美戎は俺の話に何も答えない。
ただ、黙って弁当をかきこむだけだ。
それでも、俺は一方的に話を続ける。
ごく他愛ない話だけど…少しでもあいつの気晴らしになればと思って……
「あ、そうだ…今日、お店の人に会ったんだ。
えっと、確か、純平君とか言ったかな?
おまえのこと、心配してたぞ。」
美戎は、相変わらず何も答えないまま、二つ目の弁当を開けていた。
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