1ページ劇場②

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
24 / 265
雪明かりの道

しおりを挟む
私は親切な男性に家まで送ってもらった。
 家に帰ると、心配そうな顔をした伯母さんが待っていた。
 剛と杏子から連絡を受けて、家に来たと言うことだった。
スマホは喫茶店に忘れてたらしく、剛達が家に届けてくれていた。



 *



 「あ、おはよう。
 早く顔洗っといで。
あ、会社には、今日は風邪ひいて熱が高いから休むって連絡しといたから。」

 「そう、ありがとう…さとみおばちゃん、ごめんね。
 迷惑かけて。」

 「そんなことはいいから、早くごはん食べようよ。
 一緒に食べようと思って待ってたんだ。」

 「うん……」



 和食の朝ごはんはひさしぶりだった。
 焼き魚とちょっと甘目の卵焼き…
なんだかとても気持ちが落ち着いた。


 「どうだった?」

 「え?」

 「だから…朝ごはん。」

 「うん、美味しかったよ。」

 「そうかい、良かった。」

 話さなきゃ…昨日のことを……
顔では微笑みながらも、心の中ではそんなことを考えて焦っていた。



 「さとみおばちゃん…あの…もしかしたら、剛達から聞いたかもしれないけど……」

 「あぁ、あらかたの話は聞いたから良いよ。もう話さなくて。
……それとも、話したいかい?」

 私は少し考えて、ゆっくりと首を振った。



 「さて…今日はずる休み出来たから、どこかにおいしいものでも食べにいくかい?」

 「ありがとう、おばちゃん…」

 「何言ってんだよ。食事はあんたのおごりだよ。」

 「え~~っ!?」

おばちゃんの冗談に、ちょっとだけ笑えた。



 *



 二人でショッピングセンターにでかけて、ウィンドウショッピングを楽しみ、お昼にはおいしいお寿司をいただいて、感じの良い喫茶店でお茶を飲む。



 「今日はあんまり降らなくて良かったね。」

 大きな窓から外を見ながら、おばちゃんが呟いた。



 「さとみおばちゃん…雪明かりの道の話知ってる?」

 私はふとそんなことを口にした。



 「雪明かりの道…?あぁ……新月の晩、誰にも会わずに歩いてたら、自分に会いたがってる人に出逢えるってあの話かい?」

 「え?一番会いたい人に会えるんじゃないの?」

 「私は、自分に会いたがってる人が待ってるって聞いたと思ってたけど…それがどうかしたのかい?」

 「うん…実はね……
いや、やっぱりやめとくわ、馬鹿みたいな話だから。」

 「そこまで聞いたら、気になるじゃない。
 馬鹿みたいな話、聞かせてよ。」

そう言われたら、もう話さないわけにはいかなかった。



 「実はね…私…昨夜はとにかく少しおかしくなってたから、どこともわからない田舎道をどんどんどんどん歩いてて……
本当に寂しい所でね…誰にも会わなかったんだ。
それでね、空見たら月がなくて…それで、雪明かりの道の話を思い出したんだけど……
さんざん歩いた頃、ようやく人と出会ったの。
それがね…なんと、私だったのよ。
 出会った相手が私自身だったの…笑っちゃうでしょう?
あ、もう大丈夫だから、心配しないで。
 昨夜は一時的に混乱してただけ。
あれが妄想だってこと、今はしっかりわかってる。」

 私は笑ってそう言ったのに、さとみおばちゃんはなんだかひどく強張った顔をしていた。



 「……おばちゃん?」

 「さっちゃん…その人、本当にあんただった?」

 「え…?」

それはおかしな質問だった。
 妄想に本当も何もないと思うんだけど……
でも…言われてみれば、確かにどこか違う気はした。
まず、私だったらあんなことは言わないだろうし、髪形や服装の趣味が私とはどこか違う。



 「そういえば、ちょっと違う気はしたけど…
でも、顔は間違いなく私だったよ。」

さとみおばちゃんは黙って首を振った。
それが何を意味してるのか、私にはわからなかった。



 「……どういうこと?」

 「ゆきちゃんだよ、きっと。」

 「ゆき…ちゃん?」

おばちゃんはゆっくりと頷く。



 「よしえ、勇さん、もう良いよね?
さっちゃんに何もかも話すよ。」

さとみおばちゃんは、窓越しに空を見上げながらそんなおかしなことを言った。



 「おばちゃん、何のこと?
 何もかも話すって何?」

 「さっちゃん…実はね…あんたは双子だったんだ。」

 「え…私が双子?」

 「そうだよ。
でもね、あんたのお姉ちゃんは、生まれた次の日の朝、亡くなった。」

そんな話、聞いたことがなかった。
 驚いて何も言えない私に、おばちゃんは話を続けた。



 「あんたがまだ小さい頃のことだけどね…
あんたは、独り言みたいなことを良く言ってたらしいんだ。
まるで、見えない女の子と遊んでるみたいだったって。
それでね、よしえはあんたの双子の片割れが成仏出来てないんじゃないかってえらく心配してね。
 遺された者の想いが強いと、なかなか成仏出来ないなんて話もあるから、とにかくそれ以来、亡くなったゆきちゃんのことは一切話さなくなったんだ。
そのせいかどうかはわからないけど、あんたもそのうちそういう行動はしなくなったらしい。」

 「そんなことが……」

 「まぁ、よしえ達もいずれは話すつもりだったのかもしれないけど、まさかあんなに早く逝ってしまうとは思ってなかっただろうから言いそびれたんだろうね。
そっか…ゆきちゃんに会ったのか…
きっと、ゆきちゃんはあんたに会いたかったんだろうね。
 今でもずっとあんたの傍で見守ってるんだろうね。」

 今まで存在さえ知らなかった双子の姉のことが、急に身近に感じられて胸が詰まった。



 「あんたを見てると、きっと自分が生きてるみたいに思えるんじゃないだろうかね。
 自分の分も長く、幸せに生きてほしいって思ってるんだよ、きっと。」

 「そう…なのかな。」

 「そうだよ、双子は二人で一人だなんてよく言うからね。」

 私のことをそんな風に想ってる人がいたなんて、私は気付いてもいなかった。

それに…深夜までずっと家で待っててくれたさとみおばちゃん…今日も私に付き合ってくれて…



(私…剛と別れてもひとりぼっちじゃないんだ……)


 胸がじんわりと熱くなって、込みあがって来る涙を私は必死で堪えた。



 「おばちゃん……プリンアラモード食べない?
それとも、ケーキにする?」

 「え?……そうだね。
じゃあ、食べようか。
うん、うん。」

 私達は、甘いものを思いっきり頬張った。



しばらく時間はかかるかもしれないけど、でも、きっと乗り越えられる。



 私は、ひとりぼっちなんかじゃないんだ。
 私には、本気で支えてくれる人達がいるんだから……



~fin.
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...