23 / 265
雪明かりの道
2
しおりを挟む
まわりに誰もいなかったせいか、自分でも制御出来ないくらいに涙が流れた。
叱られた子供みたいに泣きながら歩いてたら、目の端に人の姿がちらっと映った。
こんな田舎でも当然ながら人はいる。
私は俯いたまま涙を拭き、声をかけられないことを祈りながらその人の前を歩いた。
「サッチ…」
「……え?」
それは父さんと母さんが私を呼ぶ時の愛称だった。
「誰……?」
涙でかすんだ瞳に映ったのは私だった。
「ど、どうして…!?」
「サッチ、驚かないで。」
「だ、だって……」
私は都市伝説のことを思い出していた。
まさか、私の会いたい人は私自身だったっていうの?
それとも、私の頭がおかしくなって……
「いつもありがとう。
あなたのお蔭で、私はとても幸せよ。」
もうひとりの私がそう言った。
「なに、それ?
今日のことを知ってて、わざとそんなこと言ってるの?」
「……違うわ。
今日のことは、そりゃあショックだったかもしれないけど、気にすることなんてないわ。
剛はあなたの本当の相手じゃなかったってだけのことよ。」
「そんな簡単に言わないで!
貴方に何がわかるっていうの!?」
感情的に叫んだ直後、私はおかしなことに気が付いた。
今日のことを知ってること自体、おかしい。
やっぱり、これは私自身なんだ。
私自身に怒ってるなんて…私…やっぱり、頭がおかしくなったんだ……
そう思ったら、なんだか意味のわからない笑いが込み上げた。
「そうよ、あなたは笑ってるのが一番。
あなたが笑ってくれてると私はすごく幸せよ。
父さんや母さんもそう言ってるわ。」
「あぁ、そう…そりゃあ良かったわね。
でも、私はもう笑えない。
いえ…これからは笑えるわ。
今から、父さんや母さんのところに行くから、そこでまた昔みたいに家族一緒にみんなで笑えるわ。」
「サッチ…何言ってるの?
あなたがそんなことしたら、父さんも母さんもどれほど悲しむことか…」
「ほっといてよ!
こんな所で、誰にも会うわけないじゃない。
私、もう道もわからないし、きっと凍死よ。」
「馬鹿なことを…
電話があるじゃない。
誰かに電話して……」
「私を迎えに来てくれる人なんていないわ!」
私は駆け出した。
おかしな妄想を振り払うかのように…
息が切れる程走って、そっと後ろを振り向いたら、もうひとりの私はいなかった。
ほっとして、なんだかどうしようもない気持ちになって、私はその場にしゃがんで大きな声で泣きだした。
不意に今の状況が不安に感じられた。
本当に道はわからないし、こんな寒い所で夜を明かせるはずがない。
早くなんとかしないと死んでしまう。
(電話しなきゃ……)
そう思ってバッグの中を探ったけれど、なぜだかスマホが見当たらない。
背中にいやな汗が流れた。
急に身近に感じた「死」に、身体ががたがた震えた。
(どうしよう…どうすれば……)
不安で胸がいっぱいになって、まともに考えることも出来ない。
「だれか…誰か、助けてーーー!」
必死で叫んだら、それに応えるようにどこからか犬の声がした。
……犬の声はだんだん近付いて来る。
犬の姿が見えた。
吠えながら走って来る大きな犬……途端に恐くなった。
だけど、私には逃げることも出来ず、ただ恐怖に顔をひきつらせるだけだった。
「や、やめて!」
犬は私の前で吠え続ける。
「こら、ジロ!」
中年の男性が走って来るのが見えた。
きっと、この犬を追って来たんだ。
不安と安心が同時に押し寄せた。
叱られた子供みたいに泣きながら歩いてたら、目の端に人の姿がちらっと映った。
こんな田舎でも当然ながら人はいる。
私は俯いたまま涙を拭き、声をかけられないことを祈りながらその人の前を歩いた。
「サッチ…」
「……え?」
それは父さんと母さんが私を呼ぶ時の愛称だった。
「誰……?」
涙でかすんだ瞳に映ったのは私だった。
「ど、どうして…!?」
「サッチ、驚かないで。」
「だ、だって……」
私は都市伝説のことを思い出していた。
まさか、私の会いたい人は私自身だったっていうの?
それとも、私の頭がおかしくなって……
「いつもありがとう。
あなたのお蔭で、私はとても幸せよ。」
もうひとりの私がそう言った。
「なに、それ?
今日のことを知ってて、わざとそんなこと言ってるの?」
「……違うわ。
今日のことは、そりゃあショックだったかもしれないけど、気にすることなんてないわ。
剛はあなたの本当の相手じゃなかったってだけのことよ。」
「そんな簡単に言わないで!
貴方に何がわかるっていうの!?」
感情的に叫んだ直後、私はおかしなことに気が付いた。
今日のことを知ってること自体、おかしい。
やっぱり、これは私自身なんだ。
私自身に怒ってるなんて…私…やっぱり、頭がおかしくなったんだ……
そう思ったら、なんだか意味のわからない笑いが込み上げた。
「そうよ、あなたは笑ってるのが一番。
あなたが笑ってくれてると私はすごく幸せよ。
父さんや母さんもそう言ってるわ。」
「あぁ、そう…そりゃあ良かったわね。
でも、私はもう笑えない。
いえ…これからは笑えるわ。
今から、父さんや母さんのところに行くから、そこでまた昔みたいに家族一緒にみんなで笑えるわ。」
「サッチ…何言ってるの?
あなたがそんなことしたら、父さんも母さんもどれほど悲しむことか…」
「ほっといてよ!
こんな所で、誰にも会うわけないじゃない。
私、もう道もわからないし、きっと凍死よ。」
「馬鹿なことを…
電話があるじゃない。
誰かに電話して……」
「私を迎えに来てくれる人なんていないわ!」
私は駆け出した。
おかしな妄想を振り払うかのように…
息が切れる程走って、そっと後ろを振り向いたら、もうひとりの私はいなかった。
ほっとして、なんだかどうしようもない気持ちになって、私はその場にしゃがんで大きな声で泣きだした。
不意に今の状況が不安に感じられた。
本当に道はわからないし、こんな寒い所で夜を明かせるはずがない。
早くなんとかしないと死んでしまう。
(電話しなきゃ……)
そう思ってバッグの中を探ったけれど、なぜだかスマホが見当たらない。
背中にいやな汗が流れた。
急に身近に感じた「死」に、身体ががたがた震えた。
(どうしよう…どうすれば……)
不安で胸がいっぱいになって、まともに考えることも出来ない。
「だれか…誰か、助けてーーー!」
必死で叫んだら、それに応えるようにどこからか犬の声がした。
……犬の声はだんだん近付いて来る。
犬の姿が見えた。
吠えながら走って来る大きな犬……途端に恐くなった。
だけど、私には逃げることも出来ず、ただ恐怖に顔をひきつらせるだけだった。
「や、やめて!」
犬は私の前で吠え続ける。
「こら、ジロ!」
中年の男性が走って来るのが見えた。
きっと、この犬を追って来たんだ。
不安と安心が同時に押し寄せた。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる