天使の探しもの

ルカ(聖夜月ルカ)

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第2章…side ブルー

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私達は一つの町で数日の興業を終えるとまた次の町へ移るという日々を過ごしていた。

時間のある時に私は団員から楽器の弾き方や音符の読み方を教わり、しばらくするとどんな楽器も弾きこなせるまでになっていた。
私は新たにショーに向けた大衆的な曲を作り、時にはギターを、そして時にはピアノを弾きながら歌った。

ショーの最後には、私の歌に合わせてレティシアを中心としたダンサー達が踊り、観客を大いに盛りあがらせた。
私が入ってからというもの客入りは鰻登りに増えてきたらしく、座長もナターシャも上機嫌で、私には何かと親切にしてくれた。

私は団員の中で特にクリスと仲が良くなった。
彼はステージには立たないが、楽器の調整や衣裳の準備等、とにかく細々したことを一手に引き受けていた。
まだ若いだろうとは思っていたが、彼が16だということを最近聞いて私はたいそう驚いた。
なんでも、クリスは、幼い頃、会場に置き去りにされていたそうで、同情したナターシャが引き取って育ててきたらしい。
どんな事情があって彼の両親がそんなことをしたのかはわからないが、彼は一つも曲がった所がなく、素直で明るい少年に育っていた。
ただ、実際の年齢よりも大人びて見えるのは、やはり彼の生い立ちによるものなのだろうか…

彼は私に様々なことを教えてくれた。
おかげで私もこの所急速に人間の暮らしについて詳しくなれたような気がする。



私は、新しい町へ着く度にノワールの情報を探し、ステージからもその姿を探したが、結局、何一つ手掛りはみつからなかった。
いくら、私がこういう商売を始めたからといって、そう簡単にみつかるわけもない…まだ、これからなのだ…
私は、自分に何度もそう言い聞かせた。







やがて、私が入団してから三年の月日が経った頃には、エスポワール一座の名前はとても有名なものとなり、団員の数もずいぶんと増えていた。

私の生活は予想していたものよりも遥かにゆとりのあるものとなり、遣い道のない金がどんどんと貯まって来ていた。

しかし、私がほしかったのはこんなものではない。
私の目的はただ一つ、私の片割れと巡り合う事だ。

今までに一体いくつの町を通り過ぎたことだろう…
これだけ探しても手がかりの一つもみつからないとは…
時間の経過と共に、希望の光がどんどん小さくなっていくのを感じる。



私は、今更にして、つまらない賭けをしてしまったことを深く後悔していた… 
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