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ダテメガネ(ふたご座)

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「うぉぉぉぉーーーー」

俺は、テレビの前でびしょびしょになったハンカチを握り締めながら号泣していた。
な…なんて、感動的なんだ…!



韓流なんて、全く興味はなかった。
男前の韓流スターが出てるから人気があるもんだと思ってた。
しかし、そのドラマはどれも深い!
日本人が忘れかけている純愛があり、俺はいつの間にはすっかり韓流ドラマの虜となっていた。



こんなことになったのは、元はといえば、俺の一目惚れがきっかけだった。
ショッピングセンターの受け付けで働く彼女・徳永あゆみは可愛いだけではなく、いつもとても美しく優しい笑顔で接客していた。
お年寄りにも丁寧に…そして親切に答えていた。



(なんて素敵な女性なんだろう…)



あゆみの雰囲気がそうさせるのか、気軽に声をかけることもはばかられ、何度か店のことを尋ねに行ったものの、俺には必要以外のことは何も話せなかった。
間近で見る彼女は、なんだかまばゆいくらいに輝いて見えて…
まるで、少年の頃の純粋な恋心に戻ったようで、俺自身にもそれは不思議に感じられることだった。



その後、友人の母親が彼女と同じショッピングセンター内の店に勤めていることから、あゆみについての情報がぽつりぽつりと集まった。
とはいえ、友人の母親とあゆみには接点はないから人伝ての乏しい情報だ。
その中に、あゆみが韓流のカン・ジェホの大ファンだというものがあった。
韓流はもっと年配のファンが多いと思っていただけでに少し意外な気はしたが、そういえば、若いタレントの中にも韓流が好きだって言ってる子がいたことを思い出した。
カン・ジェホは、微笑みの聖天使などという大仰な異名を持つ人気スターで、日本では「ジェ様」等と呼ばれて熱狂的なファンを持つ。
俺から見たらただのにやけ野郎にしか思えなかったのだが、とにかく、彼女と話す時に共通の趣味があると盛りあがるだろうと思い、俺は、早速、奴の出てるドラマのDVDを借りに走った。 
 
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