32 / 449
2、黒水晶(規律と守護)モリオン
20
しおりを挟む
月光草の生える場所までには二時間程度かかると聞いた。
私は念のため、夕方近くになると裏山に向かって出発した。
婦人の言っていた通り、見た目よりも急な斜面が多く、ごつごつした岩肌の山道は登りにくい。
息があがり、汗がにじみ出てきた頃、小さな泉が目の前に現れた。
この場所に間違いないだろうと思ったが、しかし、予想外に早くに着いてしまったため、まだ月はそう高くには上ってはいない。
こんもりとした草の上に腰をかけ、月が上っていくのを私は待った。
(……そうだ!今、このあたりの草を摘み取って山を降り、それを月の光にかざしたらその不思議な力が宿るのではないか?
そうしたら、西の塔の魔女との約束の時間にも……
……いや、やはり無理だ。
少しは早く着くだろうが、遅れることに変わりはない。
気難しい西の塔の魔女は、わずかに遅れただけでも許さないだろう。
そんなことをしても無駄だな。)
私は諦め、ごろっと草の上に寝転んで、月の動きを目で追った。
美しい月に、耳元でさわさわいう草の音と、よくはわからないがかすかに聞こえる虫の声がとても心地良く思えた。
(身体は一つしかないし、運命は変えられない。
……いや、運命だなんて大げさだな。
そもそも、私は指輪の代金を払いたくて老人を探していただけなのに、ここ数日というもの、得体の知れないものに踊らされてばかりだ。
今も、こんな所に本当にあるかどうかもわからない薬草を探しに来ているのだから、私もどうかしている……)
そんなことを考えていると、自分自身を愚かだと思いながらも、私にはそれが妙に愉快にも思えてきた。
今までの生活では考えられなかったことだ。
私がこみあげてくる笑いを押さえていると、泉のまわりがうっすらと光っていることに気が付いた。
あの婦人が言ったことは本当だったのだ。
いつの間にか、月は天上高くに輝いていた。
私はあわてて月光草を摘み取った。
山を降りようとした時、背中の方から不意に「ありがとう」と声がした。
私は反射的に身体を翻す。
私は念のため、夕方近くになると裏山に向かって出発した。
婦人の言っていた通り、見た目よりも急な斜面が多く、ごつごつした岩肌の山道は登りにくい。
息があがり、汗がにじみ出てきた頃、小さな泉が目の前に現れた。
この場所に間違いないだろうと思ったが、しかし、予想外に早くに着いてしまったため、まだ月はそう高くには上ってはいない。
こんもりとした草の上に腰をかけ、月が上っていくのを私は待った。
(……そうだ!今、このあたりの草を摘み取って山を降り、それを月の光にかざしたらその不思議な力が宿るのではないか?
そうしたら、西の塔の魔女との約束の時間にも……
……いや、やはり無理だ。
少しは早く着くだろうが、遅れることに変わりはない。
気難しい西の塔の魔女は、わずかに遅れただけでも許さないだろう。
そんなことをしても無駄だな。)
私は諦め、ごろっと草の上に寝転んで、月の動きを目で追った。
美しい月に、耳元でさわさわいう草の音と、よくはわからないがかすかに聞こえる虫の声がとても心地良く思えた。
(身体は一つしかないし、運命は変えられない。
……いや、運命だなんて大げさだな。
そもそも、私は指輪の代金を払いたくて老人を探していただけなのに、ここ数日というもの、得体の知れないものに踊らされてばかりだ。
今も、こんな所に本当にあるかどうかもわからない薬草を探しに来ているのだから、私もどうかしている……)
そんなことを考えていると、自分自身を愚かだと思いながらも、私にはそれが妙に愉快にも思えてきた。
今までの生活では考えられなかったことだ。
私がこみあげてくる笑いを押さえていると、泉のまわりがうっすらと光っていることに気が付いた。
あの婦人が言ったことは本当だったのだ。
いつの間にか、月は天上高くに輝いていた。
私はあわてて月光草を摘み取った。
山を降りようとした時、背中の方から不意に「ありがとう」と声がした。
私は反射的に身体を翻す。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~
杵築しゅん
ファンタジー
戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。
3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。
家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。
そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。
こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。
身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。
自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜
来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。
自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。
「お前は俺の番だ」
番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。
一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。
執着と守護。すれ違いと絆。
――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。
甘さ控えめ、でも確かに溺愛。
異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる