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「あなたは、もしやオルガ様の……」

 「…!母をご存じなのですか…!!」

 「あぁ……なんてことでしょう……」

ヴェールの言葉を聞いた瞬間、三人は肩を抱き合って涙を流し始めた。
 三人の涙は止まる事を忘れたかのように流れ続ける。
 最初はその光景を呆然とみつめていたヴェールとサリーも、いつの間にかつられて一緒になって泣いていた。

 彼らの涙の理由はわからなかったが、サリーもヴェールも同様に抱えていた心の負担を流し出すかのように、一緒になって熱い涙を流した。



しばらくしてようやく皆の涙が止まった時、彼等の気持ちはまるで昔からの友人のように打ち解けていた。



 「……信じられません…
長年探していたあなたとこんな形で出会えるなんて…」

 「探していた?
……この私をですか…?」

 「そうです。
ヴェール様……あなたは、森の民の長になるべきお方なのですよ。」

 「私が、森の民の長に…?
それはどういうことなのですか?」

 「オルガ様から、何もお聞きにはなっていないのですか?」

 「母からは何も聞いてはおりません…
母は、あまり森の民の話をしてはくれませんでしたから。」

 「…そうだったのですか…
オルガ様はもしかしたらあなたのお父上に遠慮されていたのかもしれませんね…
実は、オルガ様は森の民の長・イルヤナ様のご息女だったのです。」

 「そうだったのですか……!
では、私を探されていたということはもしや私のお祖父様は……!」

 「……その通りです…
あなたのお祖父様であられるイルヤナ様はオルガ様がここを出ていかれてからたいそうお心を痛められました。
幼い頃よりオルガ様を男手一つで育てられてきたイルヤナ様の悲しみは海よりも深かったのです。
そして、ご自分のされたことをとても悔いておられました。
子供を産むことを反対されたことをとても悔いておられました。
イルヤナ様は、それから長い月日をかけてやっとオルガ様の居所を探し出され、無事にあなたが産まれたことを知るとそれはもう大変お喜びになられていました。
ところが、そんな幸せは長くは続かなかった…
オルガ様が亡くなられた事を知られたイルヤナ様は、その大き過ぎる悲しみに耐えられなかったのです。
イルヤナ様は日一日と衰弱され、そして、ついに……」

ディサが話を止め、そっと目頭を押さえる。



……遅かった。
やっと会えると思っていた祖父はもうこの世にはいなかった。

 残酷なぬか喜びに、ヴェールは激しい憤りと悲しみを噛み締めた。 
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