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「まぁ!ヴェールさん!戻られたのですね。」

 「ジネットさん、お久しぶりです。」

 「お疲れ様でした!
お医者様の町まではかなり遠かったのですね。」

 「えぇ、やっと帰ってきましたよ。」



 (お医者様って誰のことなんだ?)

 私はサリーの耳元に囁いた。



 (あ…あぁ、ジネットの手前、ヴェールが治すなんて言えないから、町でみつけた女の人を遠くの町のお医者さんだって言って連れてきたんだよ。
それで、ヴェールはそのお医者を送って行くって言ってここを離れたんだ。)

 (そうだったのか……
それは、いろいろと苦労をかけたな。)

 (気にしなさんなって。)



 「……レヴさん?サリーさん、何か?」

 私達のひそひそ話に気付いたジネットが私達に訝しげな顔を向ける。



 「あ、いや…なんでもないんだよ。」

 「久しぶりに皆揃ったことですし、今夜はなにかうまいものでも食べたいと思いまして、サリーと相談していたのですよ。」

 私は咄嗟にそんな話で言い繕った。



 「そう!そうなんだ。
ねぇ、ヴェールは何が良い?」

 「私はなんでもかまいませんよ。」

 「もうっ!そういうのが一番困るんだよ~!」

サリーは頬を膨らませ、ヴェールを大袈裟に睨み付けた。 
 
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