それでも君を愛せて良かった

ルカ(聖夜月ルカ)

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それでも君を愛せて良かった

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 「遅くなってごめん。
 今、出してあげるからね…」



 次の日も、僕は体調が悪いと言って、仕事をサボった。
 昨日はあんなに父さんに悪いと思ったのに、その日はそんなことよりも、早くあの子に所に行きたくて、たいして気にもならなくなっていた。



 昨日と同じように、僕は彼女の身体を抱き抱え、箱から出して壁際にもたれかけるようにして座らせた。
 彼女の表情は昨日と比べると、心なしか僅かに微笑んでいるように…僕が来たことを喜んでいるように思えて、僕の胸は高鳴った。
そんなのただの思いこみ。
わかっていても嬉しくて、僕は昨日と同じように彼女を抱き締めたくなったけど、青い瞳にみつめられると急に恥ずかしくなって、僕はそっと俯いた。



 「寂しかっただろ…?
またお昼ごはんの支度に戻らないといけないけど、それまでの間は一緒にいられるからね。
あ、そうだ…」

 僕は用意して来た濡らしたタオルで彼女の顔を念入りに拭き上げた。



 「……綺麗だよ。
すごく綺麗になった。
 長い間、顔も洗えなくて気持ち悪かっただろ?
 今日から毎日僕が綺麗にしてあげるからね。」

 次に僕はそのしなやかな髪の埃を払い、櫛で優しく梳かし付けた。
 何度も梳いてやる度に、その髪には少しずつ光沢が表れた。



 「……嬉しいんだね。
そうだよね…髪は女の子にとって大切なものだもんね。
 梳けなかったから、いやだったよね。
でも、こんなに綺麗になった。
これからは僕が毎日梳かしてあげるよ。」

 光沢の出た金色の髪は、昨日よりもずっとしなやかで絹糸のようにすべらかになった。



 「あ…そうだ。
まだ、自己紹介をしてなかったね。」

 僕はそう言いながら、彼女の横に同じような態勢で座った。



 「僕はこの家の息子で、アベルっていうんだ。
 年は二十歳。
 今は、父さんと一緒に細工職人をやってるんだ。
……っていっても、僕はまだ見習でたいした仕事はさせてもらえないんだけどね。
 僕の家族は父さんだけなんだ。
 母さんは僕がまだ小さい時に亡くなって、兄さんはもう何年も前に都会に出て行って、ここには滅多に帰って来ない。
でも、寂しいことなんて少しもないよ。
 僕はこの町がけっこう好きだし、人と関わるのもあんまり得意じゃないからね。
ねぇ…君は…」

ふと、横を向いた時、しなやかな金の髪の向こうに、彼女の横顔がのぞいて、僕の心臓は飛び跳ねた。
 長い睫毛に覆われた青い瞳、鼻筋が通り、色褪せてはいるけれどふっくらとした唇。
 正面から見た時よりも憂いを含んで少し大人っぽく見えて、僕の鼓動はなかなか落ちつかなかった。

 
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