それでも君を愛せて良かった

ルカ(聖夜月ルカ)

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それでも君を愛せて良かった

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 「ただいま、ファビエンヌ。
 今、帰ったよ!
 今日はずっと一人にさせてごめんね。
また夜に来るから…待っててね。」

 家に戻った僕はすぐさまファビエンヌの部屋に行って、手短にそれだけ言うと、また部屋にとって返した。



 「父さん、今、帰ったよ。」

 「アベル、えらく早かったじゃないか。」

 「うん…まぁね。
あ、これ、頼まれた材料と、先生からの手紙。
やっぱり体調は特になんともなかったよ。
じゃ、今から、僕、夕食の用意をするからね。」

 「ご苦労だったな。
そうか…体調もなんともなかったのなら良かった。
おまえも隣町まで行って疲れてるだろう。
 今夜は私が作ろう。」

 父さんは、先生からの手紙を読み、満足そうに頷いた。



 「そんなに疲れてないから大丈夫だって。
 父さんは仕事を続けてよ。
 急ぎの仕事なんでしょう?」

 「そうか…すまないな。」

 僕はそう言うと、作業場を後にした。

 夕食の支度を代わってもらえるなら助かるけれど、僕はなんとなく点数稼ぎのようなことをしておきたい気持ちだった。
 僕が良い息子であることが、いつかファビエンヌのことを父さんに紹介する時になにか得になるような…
そんな打算が僕の中で働いていた。



 *



 「……それで、材料はどういうものを買って来たんだ?」

じゃがいもを口に運びながら、父さんが僕に訊ねた。



 「う、うん。
ほら、やっぱり女性物のアクセサリーの注文が多いじゃない。
だから、僕も女性用の指輪でも作ってみようかと思って…
父さんがよく作ってるような石の付いたものをね。」

 「でも、石は高いぞ。
あれっぽっちじゃ全く足りなかっただろう?
つけにして来たのか?」

 「やだな、父さん。
 僕はまだ新米だから、とてもルビーやサファイアなんて使えないよ。
カイヤナイトっていう半輝石を買ったんだ。
ね、父さん、知ってる?とっても綺麗な青い石でね…」

 『ファビエンヌの瞳の色に似てるんだ』

 言いかけたその言葉を、僕は飲みこんだ。



 「そうか、カイヤナイトか…
良いかもしれないな。
だいたいの手順はおまえもすでにわかってるとは思うから、まずは好きなように作ってみなさい。
 何かわからないことがあればその都度訊いてくれたら良い。」

 「うん、ありがとう、父さん。」

 父さんはテイラーさんみたいなことを言って僕をからかうことはなかった。
 一緒に暮らしてるから、僕が一日の大半をこの家の中で過ごしていることを父さんは知っている。
そんな僕に恋人がいるなんて、考えてもいないんだろう。



 (まさか、同じ家の中に僕の愛する人がいるなんて…そんなこと、気付く筈ないよね…)

 僕は、父さんに気付かれないよう小さく微笑んだ。

 
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